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同級生のリコーダーを「ペロッ」…中学時代の“黒歴史” 「あれは犯罪だったのでしょうか?」
画像はイメージです(Princess Anmitsu / PIXTA)

同級生のリコーダーを「ペロッ」…中学時代の“黒歴史” 「あれは犯罪だったのでしょうか?」

中学時代、同級生のリコーダーを舐めてしまったことを後悔している──。過去の出来事をいまだに悔やんでいるという相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

「過去のこと」と切り出す相談者は、中学生だった当時を「性への興味が出てきた頃」だったとし、同級生のリコーダーを舐めたという愚行を告白します。

舐めた後すぐに罪悪感がわき、手指消毒用のアルコールをティッシュに含ませ消毒しましたが、アルコール消毒したことで、かえってのちにリコーダーを使用した際に健康被害が出なかったかという別の心配もしたそうです。

「犯罪に当たるような行為だったのだろうか」と悔やみながら振り返る相談者ですが、法的にはどうなのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。

●あるとすれば器物損壊罪だが「舐める行為は相当軽微」

──同級生のリコーダーを舐める行為は、何らかの犯罪に該当する可能性があるのでしょうか。

一見、器物損壊罪(刑法261条)に該当する可能性があるようにも思われます。

判例では、「損壊」について、物理的に器物そのものの形態を変更または滅尽させる場合だけでなく、事実上または感情上その物を本来の目的に供することのできない状態にさせる場合を含むとされています。

この基準を当てはめると、他人が自分のリコーダーを舐めた場合、少なくとも感情上そのリコーダーを吹くことができない状態になることが、人によってはあり得るため、器物損壊罪が成立するようにも考えられます。

しかし上記の判例は、すき焼き鍋や徳利に放尿した行為について器物損壊罪を成立させたものです。放尿行為とリコーダーを舐める行為を比較すると、リコーダーを舐める行為は相当軽微であると思われます。

そのため、個人的には器物損壊罪には該当しないとするのが相当ではないかと思います。なお、他の犯罪に該当する可能性もないでしょう。

●アルコール消毒で健康被害あれば、法的責任発生するおそれも

──アルコール消毒をしたことでリコーダーを使用した人に健康被害が出た場合には、何らかの責任を負うことはあるのでしょうか。

民事上は、不法行為(民法709条)が成立し、治療費などの財産的損害や精神的苦痛に対する慰謝料を支払う責任が生じます。

刑事上は、健康被害を発生させる意思(故意)があったとは考えにくいものの、過失があると認定される可能性はあるかもしれません。もし過失があったとされれば、過失傷害罪(刑法209条)が成立するおそれはあると思われます。

過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金または科料」ですが、健康被害が軽微である場合や民事上の責任を果たして被害者の方と示談ができた場合には、処罰されない可能性が大きいでしょう。

ちょっとした興味やいたずら心でやってしまったことも、犯罪が成立したり損害賠償の対象になることはあり得ます。

やってしまった時に見つかっていたら大事になり、その後の人生に影響があったかもしれません。

相談者の方には、今後は興味本位で行動を起こす前に一度立ち止まって考えることをおすすめしたいと思います。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

寺林 智栄
寺林 智栄(てらばやし ともえ)弁護士 NTS総合弁護士法人札幌事務所
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。

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