交際していた頃、自宅の合鍵を相手に渡していた――。別れた後、その合鍵がそのまま返ってこないというトラブルは少なくないようです。
弁護士ドットコムには、こうした悩みが複数寄せられています。ある相談者は、「先日別れた交際相手に自宅の合鍵を渡していたが、電話も通じず連絡が取れない。合鍵を複製される可能性もゼロではないので、いち早い返還、または鍵交換費用の請求を行いたい」と訴えます。
別の相談は、浮気をした交際相手の男性と音信不通になったケースです。「合鍵だけ返ってきても複製されていたら意味がない。とにかく鍵交換代を請求したい」とし、「合鍵の返還要求を飛ばして、いきなり鍵交換代を内容証明で請求しても問題ないか」と尋ねています。
渡した合鍵は、法的に「返して」と言えるのでしょうか。また、防犯上の不安から鍵を交換する際、その費用を相手に負担させることはできるのでしょうか。大橋賢也弁護士に聞きました。
●マイホームの場合
──交際相手に貸していた自宅の合鍵は、別れた後に法的に返還を請求できますか。相手が自分で複製した合鍵も、返還や廃棄を求められますか。
自宅の物件が自己所有か賃借(いわゆる「賃貸」)かで考え方が変わります。
まず、自宅が自己所有の場合は、元交際相手に対し、所有権に基づき、渡していた合鍵の返還を請求することができます。
相手が、合鍵を複製していることがわかったら、居住者の意思に反して自宅に侵入される危険性があることから、廃棄を求めることができるでしょう。
●賃貸の場合
次に、賃借物件の場合、合鍵の所有権は貸主(いわゆる「大家」)にあるので、居住者は、所有権に基づき合鍵の返還を請求することはできません。
居住者は、交際が継続している限りという前提で合鍵を交際相手に渡していたはずなので、別れた後は、使用貸借契約の終了に基づき、合鍵の返還を請求することができます。
相手が、合鍵を複製していることがわかったら、複製鍵を使用する目的は失われたとして、同様に複製鍵の廃棄を求めることができるでしょう。
●「合鍵を作られていたら不安」どうしたらよいか
──合鍵を複製されているおそれがあるなどの理由で自宅の鍵を交換した場合、その交換費用を元交際相手に請求できますか。
まず、合鍵が複製されている「おそれがある」というだけでは、相手方の不法行為(合鍵を複製したこと)を立証したことにはならないので難しいでしょう。
鍵の交換費用を請求する場合は、相手方が、交際終了後も合鍵を返還しないという不法行為(不作為の不法行為)を行っていることを理由に請求していくことになります。
そして、自己所有物件の場合、交換費用は鍵の所有者に発生した損害ですので、不法行為に基づく損害賠償請求権を行使し、鍵の交換費用を請求することができます。
これに対し、賃借物件の場合、そもそも貸主に無断で鍵を交換することができないので、貸主の了承を得た上で、鍵を交換する必要があります。
貸主の承諾を得た場合には、やはり不法行為に基づく損害賠償請求として、相手方に対し、鍵の交換費用を請求することができると考えます。
ただし、元交際相手ということであれば、請求をしても無視される可能性が高いかもしれません。訴訟提起しても、相手から交換費用を回収できる可能性がどれだけあるのかは疑問だと思います。