家族の葬儀で、寺から提示されたのは「相場以上」と感じる金額だった──。
亡くなった家族の葬儀をめぐり、思わぬ費用を提示されて驚くケースもある。トラブルを避けるためには、どんな点に注意すべきなのか。
消費者問題にくわしい弁護士は「宗教行事であっても契約に変わりはない。やるやらないは自由であり、金額についても歩み寄りの余地を探ることもできる」と呼びかけている。
●後出しで高額な葬儀費用を示されてびっくり
お墓や葬儀サービスをめぐっては、国民生活センターにも「価格やサービス内容について十分な説明がない」「質素な葬儀を希望したのに高額な料金を請求された」などの相談が寄せられている。2024年の相談件数は約2000件にのぼる。
弁護士ドットコムにも、良心的な価格を期待していたにもかかわらず、後から高額な費用を突きつけられたという相談が寄せられている。
相談者が家族の葬儀について菩提寺に相談したところ、「経済的理由で葬儀をしない人もいる。お寺で安価にできる」といった趣旨の説明を受けた。口調からは「無償に近い」ようなニュアンスを感じたそうだ。
しかし、実際に提示された額は70万円にも及んだ。想像していなかった額を提示され、驚いたという。
さらに四十九日法要でも「読経料5万円」を指定され、戒名を石碑に彫ることも強くすすめられるなど、寺側の対応に不信感が募った。
相談者は「お布施はこちらが決めるものではないのか」「こんなに高額なら、戒名もいらないし、お墓に入れなくてもよかった」と憤っている。
消費者問題にくわしい大村真司弁護士に注意点を聞いた。
●葬儀しない人の増加、コロナも影響か
──葬儀をめぐって、どんなトラブルが問題になっているのでしょうか。
葬儀や埋葬をめぐるトラブルは以前から指摘されてきました。
2013年には、日弁連で墓や葬儀のサービスに関する消費者向けセミナーを開催したことがあり、当時私は担当部会の部会員でした。
当時から、葬儀をしなかったり、通夜をしないなど葬儀の規模を縮小するケースが増えていました。コロナ禍を経て、その傾向はさらに顕著になったのではないでしょうか。
一方で、寺側も苦しい懐事情があります。そうした背景から説明していきたいと思います。
●経営が苦しい…お坊さん派遣サイトに登録する寺も
寺の主な収入源といえば、お布施や大規模修繕の際の寄付などが思い浮かびます。しかし、宗教意識の変化や過疎化などの影響で、都市部でも地方でもその収入は減少する一方です。
幼稚園を運営する寺もありますが、少子化の影響でそちらの経営も明るくありません。
寺が生き残るためには、既存事業で増収を図るか、新たな事業に取り組む必要があります。
私の周囲でも、特に危機感を持つ若い世代の僧侶の中には、異業種交流会に参加するなどして活動の幅を広げようとする人もいます。
最近では、葬儀などに僧侶を派遣するポータルサイトに登録する人も増えているようです。
また、寺が葬儀社と提携することもあります。都市部では、葬儀社に足元を見られてしまうこともあると聞きます。 たとえば、宗教関係費用も葬儀料に含めたうえで遺族から一括徴収し、寺に対しては極端に高額な紹介料を控除するというケースもあるようです。
●あいまいな慣習を逆手にとり、後出しで高額請求も
今回の相談のように、寺から後出しで高額な費用を提示されるというケースは、まさに「増収策の悪い例」と言えます。
あくまでも印象ですが、どちらかといえば、私の法律事務所がある広島のような地方ではあまり目立たず、大都市圏で多いように感じます。
お布施は本来、感謝の気持ちを形にしたもので、金額について明確な合意がないのがむしろ一般的です。依頼する側が相場を調べ、それに近い金額を渡すというのが従来の慣行だったと思います。
昔は近所の人に聞いたものですし、私の父の葬儀の際には、葬儀社が別途支払いを前提に相場を教えてくれました。
今回の相談事例は、こうした金額のあいまいさを逆手に取り、寺側が一方的に金額を決めて請求しているケースといえるでしょう。
●読経や戒名も「やるやらないは遺族の自由」
──今回のケースは、法的にはどう考えられるでしょうか。
法的にみれば、宗教行事の実施も契約の一種です。読経や戒名(法名)の授与といった給付内容と、その対価としてのお布施について、当事者間の合意によって成立します。
ただし、通常の契約と異なり、内容や金額があいまいとされることが多いのが特徴です。
そのあいまいさにつけ込み、悪徳商法のように「やるのが当たり前」「実施が必須」といった前提で強引に勧誘し、後から高額な料金を請求する契約を結ばせようとするわけです。
しかし、あくまでも契約ですから、実施するかしないかは、遺族の自由です。断ってもかまいません。寺の言い値で支払う必要もありません。
不当に高額だと感じた場合は、その旨を伝えて、適正だと思う金額を提示するなどして、歩み寄りの余地を探りましょう。あっさりと押し切られないことが重要です。