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「欠勤したらバイトの代役探して1000円払え」 ラーメン店の「不可解なルール」、実質的な「罰金」じゃないの? 弁護士解説
ラーメン店の勤務(Fast&Slow / PIXTA)

「欠勤したらバイトの代役探して1000円払え」 ラーメン店の「不可解なルール」、実質的な「罰金」じゃないの? 弁護士解説

休むなら、代役のバイトを探してきて、お礼を払えーー。飲食店が、バイト従業員に課した「ルール」はおかしいのではないか。そのような相談が弁護士ドットコムに寄せられている。

相談者によると、バイトしたいと考えたラーメン店から「いかなる理由であっても出勤日の前日に欠勤することになった場合自分で交代相手を探し、その人に500円のお礼、当日は1000円のお礼を払う」という「ルール」の存在を伝えられたという。

相談者は、シフト欠勤した従業員に対する実質的な「罰金」にあたるのでは、と考えている。はたして、法的にこのような「ルール」は問題あるのか。労働問題にくわしい草木良文弁護士に聞いた。

●バイト従業員の欠員を探す責任は「店側」にある

画像タイトル Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

ーー欠勤する従業員は、自分で代役を探さなければいけないのでしょうか

欠勤する際に代役を探す義務は従業員にはありません。従業員は雇用契約に基づいて労務提供をする義務があり、飲食店の従業員であれば、調理したり、接客したりするのが仕事です。

一方で、従業員の確保は使用者が責任をもっておこなうものです。今回のケースではラーメン店の店主が自分の責任で代役を探す必要があります。そのため、従業員に代役を探すというルールや、そのルールにしたがって代役を探させる業務命令は違法となる可能性があります。

●罰金制度は禁止→今回のケースではどうなるか

ーー欠勤する従業員が代役に500円〜1000円のお金を支払うことに問題はありますか

相談者が心配しているような「罰金制度」は、労働基準法で禁止されています。

労働基準法16条は、使用者が、労働契約の不履行の違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしたりすることを禁止しています。遅刻したら罰金1000円を使用者に支払うなどといった罰金制度が典型的な例です。

ーー今回のケースは罰金にあたるのでしょうか

このラーメン店では、休んだ従業員が店にではなく、代役に金銭を支払うという点で典型的な「罰金制度」とは異なります。しかし、まったく同じ裁判例は見当たりませんが、違法となる可能性があるでしょう。

まず、ルールについて口頭で言われただけで、雇用契約書などに何も記載がない場合、当事者間の合意があったとは言えないと思われますので、欠勤した従業員には代役に金銭を支払う義務が発生しません。欠勤した従業員に支払いをさせた場合は当然違法です。

ルールについて雇用契約書などに記載があっても、当然有効とは限りません。代役に金銭を支払うことは、代役の不満を抑制するための費用と考えることもできるでしょう。

つまり、従業員が欠勤したことにより、使用者が代役の従業員を確保するための金銭を支払い、使用者に損害が発生するので、欠勤した従業員にその損害を補填させたのと同様の結果となります。

そのため、このルールは労働基準法16条が禁止している労働契約の不履行の違約金や損害賠償額の予定にあたり、違法となる可能性があります。

●ラーメン店側は「金銭で従業員を縛るルール」を定めるべきではない

ーー金銭で縛るようなルールはやめるべきでしょうか

今回のルールについて、実際に裁判所がどういった判断をするかは裁判になってみないとわかりません。しかし、金銭で従業員を縛るルールは、相当な工夫をしても違法な可能性があり、使用者と従業員の関係としても健全ではありません。

こういったルールを定めることは避け、他の方法を考えるべきでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

草木 良文
草木 良文(くさき よしふみ)弁護士 小野瀬有法律事務所
東京弁護士会所属。不動産・飲食・イベント会社などを中心としたトラブル、労働問題、債権回収、離婚・男女問題などを扱う。2022~2024年度東京弁護士会・法教育委員会副委員長。

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