「隠し子を知らないまま示談に合意してしまった。それでも、不倫相手にもう一度、慰謝料を請求できるのか」──。
夫の不倫が原因で離婚した女性が、弁護士ドットコムに切実な悩みを寄せています。
不倫に気づいた女性は、不倫相手と元夫の双方に慰謝料を請求し、それぞれ100万円以上(一部は支払い済み)で、いったん金額の合意まで進めていました。
ところが離婚後、思いもよらない事実が突きつけられます。元夫と不倫相手の間に、「隠し子」が2人いたのです。
元夫らはこれを認めており、女性の手元には録音やメッセージの証拠も残っていました。「別れた」はずの交際は、実際には数年も続いていたことになります。
いったん合意した慰謝料を、あとから覆し、さらなる慰謝料を請求することはできるのでしょうか。離婚・男女問題にくわしい林本悠希弁護士の監修のもと、解説します。
●原則として「示談」には強い効力がある
──いったん慰謝料に合意したのに、さらに請求することは可能でしょうか
慰謝料の金額を合意(示談)し、「他に債権債務がない」といった清算条項が入っていれば、原則として、同じ不貞を理由にあとから追加請求することは難しくなります。
すでに精神的苦痛について金額を合意した以上、同一の不貞を蒸し返しにくい、というのが基本です。
●「知らなかった重大な事実」があれば再請求の余地
もっとも今回は、示談の時点で女性が「隠し子の存在」や「離婚後も交際が数年続いていた」ことを知らなかった点が重要です。
示談で清算されたのは、あくまで当時認識していた不貞への慰謝料。子どもが2人生まれるほど深く長期の関係という想定外の事実が判明した場合、その部分に示談の効力は及ばない、と主張する余地があります。
さらに「すでに別れた」と説明されていたのに関係が続いていたなら、誤った前提で応じたことになり、錯誤(民法95条)による示談の取消しや、対象外としての追加請求も検討できます。
録音やメッセージの証拠が残っている点は大きな支えです。時効(新たに判明した事実を知ってから原則3年)にも注意してください。
●追加の請求額は抑えめになるか
しかし、冒頭でご説明したとおり、基本的にはなかなか難しい請求であることは間違いありません。
また、仮に追加の慰謝料請求が認められるとしても、不倫相手と元夫については、すでにそれぞれ100万円以上の慰謝料を合意しているということですから、追加で請求できる慰謝料額はそれほど多くないかもしれません。
そうすると、請求にかかる弁護士費用との兼ね合いも問題になりますから、その辺りも含め、専門家へご相談されることをおすすめします。