結婚したばかりの夫に隠し子がいるようですーー。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられました。
相談者の女性は結婚後、夫に「認知していない子どもがいる」と告白されました。夫によれば、認知をしておらず、養育費も支払っていないそうです。相談者は夫への不信感が募っていますが、現在、妊娠中のため離婚には迷いもあります。
子どもの存在を隠していたことは、離婚事由になるのでしょうか。また、もし婚姻を継続した場合、今後、隠し子の母にあたる女性から認知や養育費を要求される可能性はあるのでしょうか。竹村 公利弁護士に聞きました。
●離婚理由になるのか?
——隠し子の存在は、離婚事由になりますか
婚約時の話し合いの状況のほか、夫の誠実な対応の有無など結婚後の事情によっては「婚姻を継続し難い重大な理由」(民法770条1項5号)に該当するものとして、離婚が認められる可能性はあります。
もし隠し子が結婚後にできた場合は、不貞行為があった可能性がありますね。不貞行為は離婚事由(民法770条1項1号)になります。
——その場合、夫に慰謝料を請求できるのでしょうか
認知していない子どもがいることを隠して結婚したことが不法行為にあたるかどうか問題になります。
積極的に告げるべき機会もないまま結婚した場合は不法行為とまでは言えないケースもあると思います。
一方、夫に子どもがいないことを結婚の条件としていたのに、あえて隠して結婚した場合や不誠実な態度に終始していた場合は、婚約時の誠実義務違反や婚姻の自己決定権の侵害として不法行為となり、慰謝料請求が認められる可能性があります。
●子どもへの影響は?
——今後、隠し子の母にあたる女性から認知や養育費を請求される可能性もあります。請求には時効があるのでしょうか
認知の請求については原則として時効はありません。ただし、死後認知については父が死亡してから3年以内です。
また、養育費の時効は権利を行使できることを知った時から5年です。
——隠し子が認知された場合、相談者の子どもにどのような影響があるのでしょうか
認知により、夫が亡くなった場合の相続権が隠し子に発生します。そのため、相談者の子どもの相続分が減ります。子どもの法定相続分については、相談者の子どもと隠し子とで等分になります。
また、隠し子にも「遺留分」といって最低限の遺産相続を求める権利が発生します。仮に夫が相談者の子どもに全て譲るという遺言をしても、遺留分相当の遺産が隠し子にわたる可能性があります。
その場合には隠し子を含めた遺産分割協議が必要となり、相談者の子どもにはそれなりの負担になるでしょうね。