「夫の不倫相手に職場まで押しかけられ『別れてください』と騒がれました」
困った様子の女性から弁護士ドットコムに相談が寄せられています。
女性によると、夫と不倫相手の不貞行為は1年前から始まり、悪質な嫌がらせを受けているといいます。
ある時、不倫相手は、女性の退勤時間に合わせて職場に押しかけ、同僚たちがいる前で「別れてください」と迫ったそうです。
不倫相手は不貞行為を認めず、あくまで夫の「友人」をよそおい、「あなたの旦那さんの親友だから頼みに来ただけです」と言い張ったとのことです。
夫も女性に対し、「お前の飯はもう食わない」などと言い、不倫相手がつくったご飯を持ち帰り、女性の目の前で食べるそうです。
不倫相手は女性の子どもにも近づき、夫と不倫相手、子どもの3人で出かけたりしており、女性は家庭内で孤立しているといいます。
夫からは謝罪や慰謝料もなく、一方的に「性格の不一致」を理由に離婚を求めており、女性はそれを拒否している状態です。
女性は夫と不倫相手から嫌がらせを受けたとして、慰謝料を請求できるのでしょうか。また、女性は夫と離婚しなければならないのでしょうか。離婚問題にくわしい林奈緒子弁護士に聞きました。
●不倫相手の行為は「名誉毀損」や「プライバシー侵害」になる
──不倫相手が職場に押しかけ、女性のプライバシーに関することを同僚の前で言いふらしたことに法的な問題はないのでしょうか。もし、何らかの問題がある場合、女性は不倫相手に慰謝料請求できますか。
名誉毀損やプライバシー侵害となり、民事上、不法行為となるだけでなく、刑事上も違法とされるでしょう。女性は、夫の不倫相手に対して、不貞慰謝料のほか、名誉毀損、プライバシー侵害に基づく慰謝料を請求することが可能です。
──夫は女性が用意したご飯を食べず、不倫相手がつくった料理を家庭に持ち込んで食べているそうです。こうした行為はモラハラ(モラルハラスメント)にあたらないのでしょうか。モラハラだとしたら、離婚時に慰謝料請求できますか。
慰謝料請求が可能です。不貞相手の料理を持ち込んで食べることは、夫婦の関係を侵害する行為となり、モラハラになります。
婚姻関係の破綻の一因を作っているともいえ、離婚慰謝料の請求原因の事情として考慮される行為です。
●きちんと方針を立てて「不倫関係」の証拠を集めていく
──夫と不倫相手は「親友」であると言い張り、不貞行為を認めていません。女性は2人に不貞行為の慰謝料を請求できず、離婚の求めに応じなければならないのでしょうか。
不倫を理由に離婚したり、慰謝料を請求する場合、夫と不倫相手が不倫関係にあることについて、その立証責任は女性にあります。まずは証拠集めをしていくことになります。
その際、きちんと方針を立てたうえで、法的な観点から必要な証拠を考え、それに則った証拠集めをすることが大切です。
闇雲に「証拠集めを」と思うと精神的ストレスに耐えられなかったり、不要な証拠ばかりになってしまい、調査費用を無駄にするというケースも見てきました。
まずは、ご自身の希望する結論を導くために何が必要か、弁護士にご相談されたうえで効果的な戦略を立てて進めていくことをおすすめします。
──夫と不倫相手からの嫌がらせに困っている女性、これからどうすればいいでしょうか。
不倫関係にある夫は、本来、女性に対して離婚を請求することはできない立場です。逆に、女性は夫や不倫相手に慰謝料を請求できる立場です。
同居中は、夫からの圧力により、ご自身の置かれた立場がよくわからなくなってしまう方もいらっしゃるので、助けてくれる弁護士に相談してみましょう。