「18歳になったら、高校を卒業していなくても家から出て行け」——。
高校3年生の息子が夫からそう言われていると、母親が弁護士ドットコムに相談を寄せた。夫と息子は不仲で、「法律的には問題ないはずだ」と話しているという。
成年年齢が18歳に引き下げられ、高校在学中に成人を迎える生徒は珍しくない。親は成人した子を追い出せるのか。日向一仁弁護士の監修のもと解説する。
●親権は消えても、扶養義務は消えない
──18歳になった高校生の息子を、父親は家から追い出せますか。
18歳になったということだけで、家から強制的に追い出すことはできません。
18歳になれば成年となり、親権には服さなくなります。そのため、親権に基づく居所指定権(民法822条)によって、親が子の居所を決めるという関係でもなくなります。
もっとも、これは親権に基づいて居所を指定する権限がなくなるということであって、反対に、18歳になったことだけを理由として子を自宅から強制的に退去させる権利が生じるわけでもありません。
また、18歳になったからといって、親の扶養義務が当然に終了するわけでもありません。
父母は、子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養する責務を負っています(民法817条の12第1項)。また、親子は直系血族として互いに扶養する義務を負っています(民法877条1項)。
そして、子が成年に達した後も扶養が必要かどうかは、年齢だけで一律に決まるものではありません。高校在学中で経済的に自立していない18歳であれば、就学状況や自活の可能性、父母の資力などの事情に応じて、引き続き扶養の対象になると考えられます。
成年年齢が18歳に引き下げられたからといって、養育費や親による扶養が当然に18歳で終了するわけではありません。
●「追い出す」としても扶養義務は続く
――父親が退去を求めるとすれば、どのような根拠に基づくことになりますか。
たとえば自宅が父親の所有であれば、所有権に基づいて明渡しを求めたり、無償で住まわせている関係を使用貸借と捉え、その終了を主張したりすることが考えられます。
ただし、親子など親族間で居住を認めてきた場合には、単に所有者であるというだけで直ちに結論が決まるとは限りません。住むことになった経緯や目的、これまでの家族関係、双方の居住の必要性、退去によって子に生じる不利益など、具体的な事情が問題になります。
そのため、高校在学中で経済的に自立していない子に対する明渡請求については、居住の経緯や双方の必要性、退去による不利益などの具体的事情によっては、父親の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)と評価される可能性もあるでしょう。
また、仮に自宅で同居させないとしても、それだけで扶養義務がなくなるわけではありません。
同居させることだけが扶養の方法ではなく、別居を前提として、生活費や住居費などを負担する方法も考えられます。
具体的にどのような扶養が必要か、その費用を父母がどのように負担するかは、子の生活上の必要性、就学状況や収入、父母それぞれの資力などを踏まえて判断されます。
●「実力行使」は違法の可能性
――実力で追い出すことは可能ですか。
本人の同意を得ず、裁判などの法的手続も経ないまま鍵を交換して締め出すなど、実力で退去を強制することは、自力救済として違法と評価され、損害賠償責任を負う可能性があります。
扶養の内容や方法について家族間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の扶養請求調停や審判を利用することができます。