夫の不倫が、20年以上にわたって続いていた——。
夫の不貞によって精神的な不調をきたし、離婚した女性が、不貞相手の女性に賠償を求めたいと弁護士ドットコムに相談を寄せている。
相談者が知りたいのは慰謝料の「相場感」だ。
20年とは異例の長さにも見えるが、弁護士ドットコムには「20年級の不貞」をめぐる相談が、した側とされた側の双方から届いている。
結婚生活の大半にあたる期間、不倫を続けている夫。 不倫相手との同居を続ける夫に対して、「不倫は認めるが離婚は絶対にしない」と口にする妻。
不倫の年月が長くなればなるほど、慰謝料も積み上がるのではないかと思いがちだ。実際はどうなのだろう。離婚・男女問題にくわしい林本悠希弁護士の監修で解説する。
●20年の不倫でも、慰謝料は比例して増えない
不倫の期間が長ければ、精神的苦痛が大きいとして、慰謝料が増える理由のひとつになります。
ただし、期間が2倍、3倍になったからといって、慰謝料も同じように倍増していくわけではありません。
裁判の実務では、不倫で離婚に至った場合の慰謝料は100万〜300万円ほどの範囲で認められることが多いと思われます。
不倫期間が長くても、特別な事情がない限り、500万円を超えるケースは極めてまれです。
●過去の不倫は「時効」で請求できなくなる
また、「20年分の慰謝料をまとめて請求したい」と考えたとき、壁になるのが消滅時効です。
民法は、不法行為による損害賠償請求権について、被害者が損害と加害者を知った時から3年間行使しなければ、時効で消滅すると定めています(724条1号)。
つまり、「不倫があったこと」と「相手が誰か」を知った時から3年が経過すると、慰謝料を請求する権利がなくなってしまうのです。
不法行為の時から20年間行使しない場合も同様です(同条2号)。20年以上前の不倫を知ったとしても、その部分は時効にかかるわけです。
ただし、これらは、不貞相手の女性に対する慰謝料の請求に関する話であって、配偶者に対する離婚慰謝料(不貞行為が原因で離婚したことによる慰謝料)については、離婚してから3年(知らない場合も離婚から20年)が時効になりますので、留意が必要です。
では、長く続く関係の場合、時効はいつから数えるのでしょうか。
最高裁は1994年1月20日の判決で、配偶者と第三者が同棲していたケースについて、同棲関係を知った時から「それまでの間の慰謝料請求権」の消滅時効が進行すると判断しています。
かみくだいていえば、たとえば、夫が相手と同棲していることを、妻が2020年に知ったとします。何も手を打たないまま2023年を迎えれば、それ以前の分は時効で請求できなくなってしまいます。
不倫の事実を知ったら、放置せず早めに対処する。そうしなければ過去の分の慰謝料を請求できなくなる、というわけです。