スーパーの駐車場で買い物カートを押していたところ、誤って他人の車に当たってしまった──。
そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談によると、カートが車のドアに「コツン」と接触したといいます。車内には運転手が乗っており、相談者はすぐに謝罪しました。
幸い、車に目立ったキズはなかったようですが、もしキズが付いていたら、修理代を支払わなければならないのでしょうか。
また、その場ではキズが見当たらなかったのに、後日「修理代を払ってほしい」と請求されたら、どうすればよいのでしょうか。
スーパーの駐車場で誰にでも起こりうる「買い物カートと車の接触トラブル」。どこまで責任を負うことになるのだろうか。大和幸四郎弁護士に聞きました。
●「コツン」と当てただけでも修理代を支払う?
──買い物カートを他人の車にぶつけてキズを付けた場合、修理代を負担しなければならないのでしょうか。
不注意で他人の車を傷つけた場合、原則として、カートを押していた人が修理代を負担することになります。
民法709条は、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、損害を与えた人に、賠償責任を負わせると定めています。
つまり、わざとぶつけたわけではなくても、不注意によって車を傷つけたのであれば、損害賠償責任が生じる可能性があるのです。
ただし、カートが車に接触したからといって、必ず修理代を支払わなければならないわけではありません。
たとえば、車にキズやへこみなどがなく、損害が発生していなければ、基本的に修理代を支払う必要はありません。
問題となるのは、接触した直後にはキズが見当たらなかったのに、後から「キズが見つかった」と修理代を請求された場合です。
この場合、重要なのは「そのキズが本当に今回の接触によって付いたものなのか」という点です。
なお、民事裁判で損害賠償を請求する場合、原則として、請求する側が損害の発生や接触との因果関係を立証する必要があります。
つまり、車の所有者側が「カートをぶつけられた」と主張するだけで、当然に修理代の支払いが認められるわけではありません。
●「ドアを丸ごと交換する」高額な修理代を請求されたら?
──相手から「ドアを丸ごと交換する必要がある」として、高額な修理代を請求された場合、全額支払わなければならないのでしょうか。
相手が希望する修理方法や請求金額を、そのまま受け入れる必要はありません。
損害賠償の対象となるのは、原則として、事故と相当因果関係のある損害です。
たとえば、小さなキズを直すためにドア全体の交換費用を請求された場合、交換が本当に必要なのか、部分的な修理では対応できないのかといった点が問題になります。
また、もともと付いていたキズや、今回の接触とは関係のない損傷についてまで、修理代を負担する必要はありません。
一方、見た目には小さなキズでも、損傷の場所や程度によっては、修理に相応の費用がかかることも考えられます。
大切なのは、請求された金額が、今回の接触によって生じた損害を回復するために必要かつ相当なものかどうかです。
トラブルを防ぐためには、接触した場所や車の状態をその場で写真に残しておくことが重要です。
また、後日修理代を請求された場合は、見積書や損傷箇所の写真などを確認し、金額や修理内容に疑問があれば、すぐに支払いを約束せず、説明を求めるとよいでしょう。
●スーパーや保険会社に負担してもらえる?
──スーパーが用意したカートなのだから、店側に修理代を負担してもらうことはできないのでしょうか。
カートを利用していた人の不注意で車を傷つけた場合、スーパーが当然に修理代を負担するわけではありません。
ただし、カートの車輪が壊れていたり、店舗側の管理に問題があったりした場合には、事情によってスーパー側の責任が問題になる可能性もあります。
また、こうしたトラブルで確認しておきたいのが「個人賠償責任保険」です。
これは、日常生活で誤って他人の物を壊してしまった場合などに損害賠償責任を補償する保険です。
自動車保険や火災保険、傷害保険などに特約として付いていることがあります。買い物カートで他人の車を傷つけた場合にも、補償の対象となる可能性があります。
ただし、実際に補償されるかどうかは、契約内容や事故の状況によって異なります。加入している保険会社に確認するとよいでしょう。