「子ども神輿という地域のイベントに、地元の中学生が強制参加させられる制度は違法ではないでしょうか」——こんな相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者の住む地域では、子どもが神輿を担ぐ行事があり、原則として、子どもたちには参加する義務があるそうです。しかし、今年はさまざまな事情で、参加できない子どもたちが多い状況のようです。
自治会の大人たちは、「地域に住んでいるなら参加は当然」と、こうした状況に不満をもち、不参加者からはご祝儀と称して強制的にお金を徴収しようと考えているようです。
子ども神輿への参加を強制することはできるのでしょうか。また、不参加の場合にご祝儀の支払いを強制することはできるのでしょうか。
●信教の自由を不当に侵害し、違法となる可能性
まず、子ども神輿のような祭りや、それに伴うご祝儀は、神道などの宗教的な慣習に由来するものと考えられます。
憲法20条は、信教の自由を保障しており、何人も宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されないと定めています(同条2項)。
「宗教上の行為」にあたるかどうかは、宗教的色彩がどの程度濃いのかといった点を、個々のケースの具体的な事情を考慮して判断されます。
本件で問題となっている子ども神輿というイベントは、地域行事としての側面(地域の連帯感の醸成、子どもの健全育成など)をたしかに有するものの、「御神輿を担いで神社に参詣する」というイベントの性質上、宗教的色彩が強いと判断される可能性は非常に高いと考えられます。
そのため、神輿を伴う祭事への参加やご祝儀の納付といった宗教的な行事への参加・費用負担を、法的に強制することは難しいと考えられます。
●集会・結社の自由の観点からも問題
画像はイメージです(しまじろう / PIXTA)
また、集会・結社の自由(憲法21条1項)からも問題です。
自治会や子ども会は、任意参加の団体のはずです。その活動への参加は基本的に個人の自由であり、原則として参加義務は生じないといえます。
なお、自治会や子ども会は公権力ではないため、憲法の規定が直接適用されるわけではありませんが、参加を強制することは信教の自由や集会・結社の自由との関係で問題があるため、民法上の不法行為(709条)となる可能性があります。
●不参加者への「ご祝儀の強制徴収」も任意性に反する可能性
ご祝儀の強制徴収の問題についても、同様に考えられます。
そもそもご祝儀とは、行事に対する祝いの気持ちを表すものであり、任意に支払われるべきものです。参加・不参加に関わらず強制的に徴収することは、上で説明したのと同じように違法となると考えられます。
さらに、この事例では不参加の理由に「部活の大会」「不登校」「いじめ」といった子どもの健全な成長に関わる事情が含まれています。
子どもの成長をサポートすべき大人が、伝統に固執するあまり、子どもに精神的苦痛を与えるような強制的な言動をすることは避けるべきです。この点からも、過度な圧力を伴う強制徴収は、望ましい対応とはいえません。