「死後、義実家の同じ墓に入りたくない」
そう考える女性は少なくないようです。弁護士ドットコムにも墓に関する相談は多く寄せられていますが、その中には、さまざまな理由から夫側の墓に入りたくないというケースがあります。
長年、「嫁として義父のお世話をしてきた」という相談者の女性は、女性の子どもの大学の学費を援助してもらったことを、夫の兄に「父のお金を騙してとって使った。ずるい」などと言われたそうです。
女性は、「子どもは義父にとっては実の孫。義父はかわいがってくれていました。それをそんなふうに言われるのは心外です」と憤っています。
今も夫の兄からの嫌がらせは続いているといい、女性は自分の死後を見据え、夫の兄も入るであろう夫側の墓に入りたくないと考えているそうです。
女性が夫側の墓に入らないても良い方法はあるのでしょうか。僧侶でもある本間久雄弁護士に聞きました。
● 「遺言書で祭祀継承者を指定する」
——女性が夫側の墓に入りたくないという場合、生前、誰にその意志を伝えておけばよいでしょうか。
女性が夫側の墓に入りたくないという場合、死後、葬祭や納骨をしてくれそうな人(子どもや親戚、友人、知人等)に伝えておくというのが一般的ではないかと思われます。
——女性が夫側の墓に入りたくないという場合、遺言書に書いておくことに、法的な効力はありますか。
遺骨は、相続財産ではなく、祭祀財産に準ずるものとして取り扱われます(最高裁平成元年7月18日判決)。
祭祀財産は、亡くなった方の意思で誰が取得するかを決めることができます(民法897条1項)。あらかじめ、親しい家族・親戚・友人知人に死後の納骨場所について話し合っておいて、遺言書でその方を祭祀承継者として指定した上で、遺骨の納骨場所について記載しておくことは有効なものと言えます。
● 「死後事務委任契約」を結んでおく
——もし、遺言書に書いても確実に実現できそうにない場合、「次善の策」はありますか。
死後事務委任契約という方法があります。
死後事務委任契約とは、委任者が第三者に対して、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する死後事務を委任する契約のことを言います。
死後事務委任契約は、委任者の死後、たとえ相続人であったとしても解除することができないとされています(東京高裁平成21年12月21日判決)。
死後事務委任契約を取り扱っている士業(弁護士・司法書士・行政書士等)がいますので、家族などが夫の墓に入りたくないという女性の希望に反対をしているといった事情があるならば、死後事務委任契約を締結して、受任者に予め決めておいた墓地や納骨堂に納骨をしてもらうということも一考です。