全国的な空き家の増加により、各地でトラブルも増えています。弁護士ドットコムには、隣の空き家にムクドリが巣をつくってしまい、騒音に悩まされているという人からの相談が寄せられています。
相談者によると、空き家の屋根裏や雨戸などにムクドリが巣をつくっており、鳴き声がひどく騒音になっているとのことです。あまりの騒音に、鳴き声が聞こえると頭痛が起きるようになったといいます。また、周囲にはフンや死骸なども落ちており、衛生面での不安をうったえています。
相談者は、自治体や警察などに相談しましたが、「空き家の所有者が対策しない以上、何もできない」と言われているそうです。困った空き家のトラブル、何か対策はできるのでしょうか。金岡紗矢香弁護士に聞きました。
●空き家の持ち主を調べてもいい?
——相談者は空き家の所有者を調べて直接コンタクトを取りたいと考えているそうですが、法的に問題はないのでしょうか。
近隣の空き家から発生する騒音や悪臭で苦しんでいるのに、自治体が対応してくれないため、ご自身で所有者を調べて連絡したいと考える方もいるかもしれません。
不動産の登記情報は一般公開されているので、法務局で手続きして所有者を調べることに問題はありません。ただし、直接連絡して苦情を申し立てると、大きなトラブルに発展する可能性があるため、慎重な対応が求められます。
——所有者が何も対応してくれない場合は、相談者がムクドリの巣を除去したり、空き家をネットでおおうなどの対策をとってもよいのでしょうか。
空き家であっても他人の所有物です。所有者が対応しないからといって勝手に侵入してムクドリの巣を除去したり、空き家をネットで覆ったりすると、住居侵入罪や器物損壊罪、鳥獣保護法違反などに該当し、法的な責任を問われる危険性があるため絶対にやめましょう。
●どこに相談すればいい?
——自治体が何もしてくれない場合、どこに相談すればよいのでしょうか。
自治体の対応に期待できなければ、地域によっては弁護士会が空き家問題に関する相談窓口を設けている場合があります。
また、空き家相談センターなど、空き家問題の専門家からアドバイスを受けられる機関に問い合わせてもよいでしょう。騒音や悪臭など衛生上の問題が生じていれば、保健所に相談することも考えられます。
——今、空き家を放置するとどうなるのでしょうか。
空き家を放置していると、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家法)にもとづき「管理不全空家」や「特定空家」に認定される可能性があります。
認定されると、固定資産税の軽減措置の対象外になるなど、所有者にはさまざまな法的なリスクがあります。「特定空家」の場合は、自治体が改善の勧告や命令をおこないますが、命令に従わない場合は、50万円以下の過料に処されたり、強制撤去のなどの対応がおこなわれる可能性もあります。
空き家を放置せず、対応することが望ましいです。