体臭のひどい客の扱いに頭を抱えているゲームセンターが、これ以上はサービス提供を打ち切って「出入り禁止」にせざるをえないとして、弁護士ドットコムに相談を寄せている。
相談者によると、この常連客の臭いについて、複数の客から「なんとかしろ」と苦情が届いているという。
体臭をめぐっては、Xでもゲームセンターやカードゲームなど一部のレジャー系施設を利用する客に関する苦言がみられる。
また、元フリーアナウンサーの女性が「夏場の男性の体臭」をめぐってXに投稿したところ、「差別的」だと批判されて所属先から契約解除された出来事も記憶に新しい。
客の臭いを理由とした「出禁」は許されるのだろうか。法的な側面から検討したい。
●客のクレームが集まるほどのひどい臭い→接客した従業員も嘔吐
冒頭のゲームセンターでは、体臭のひどい常連客に対して、伝え方に気をつけながら、何度か「清潔感に配慮してほしい」と頼んだものの、その願いは無視されたという。
そればかりか「臭いと言っている客の名前を教えろ」などと詰め寄られ、改善のないまま利用が続いているそうだ。
その客の体臭は、接した従業員が「店の裏手で吐き戻し」てしまうほどのひどさだという。しかし、「周囲に相談したところ、体臭だけで差別するのは良くない、我慢するべき、と言われました」。
相談者は、このように苦悩しながらも、従業員や客に影響があり、正常な営業に支障が生じているとしている。体臭のひどさを理由として、客を退店させることは可能なのだろうか。西村裕一弁護士に聞いた。
●具体的な支障があれば出禁も可能
——体臭がひどく、それを複数回注意しても改善されない客に対して、店は退店を求めたり、出禁にしたりできますか
ゲームセンターの管理者(会社や店長など権限のある人)は、営業の実施にあたって、施設管理権を持っています。
そのため、自身の管理する施設に誰を入店させるかどうかについて裁量があります。したがって、施設管理者が正常な営業のために一定の人を出禁にすることは可能です。
ただし、障害や国籍などを理由とした出禁は差別的な取り扱いにつながるためできません。
今回のケースでは、体臭が原因で他のお客さんからのクレームが複数発生し、従業員の体調も悪化するなど、すでに具体的な支障が発生しています。
体臭を数値化することは難しいですが、このような出来事が継続して発生していることからゲームセンターが出禁の措置を取ることも可能だと考えます。
なお、クレームを挙げている顧客の名前などを教える義務はありません。
この場合、店側が一人で対応するのは負担も大きく、争いになりがちですので、複数人で対応すべきです。
仮に退店を求めても居座るなどした場合には、最終的には警察に通報して、経緯を説明するようにしましょう。
具体的なクレームや営業の支障なども発生していないのに、一方的に出禁にするのは合理的な理由がなく裁量を逸脱していると評価される可能性もあるので注意が必要です。