体調が悪いにもかかわらず、部下が在宅勤務を続けて仕事を休もうとしない──。弁護士ドットコムにそんな相談が寄せられています。
相談者によると、新型コロナウイルスに感染した部下が「翌日からテレワークできる」と申し出て、そのまま在宅勤務を始めたそうです。
しかし、1週間以上経っても、咳や頭痛などの症状が続いており、少し業務が遅れていることに、相談者は頭を悩ませているといいます。
部下はすでに有給を使い果たしており、これ以上休むと給料が下がってしまうことを懸念しているようです。
体調不良のときに在宅勤務をすることについて、ネット上でも「『体調不良なので休む』よりは助かるかな」「正常なパフォーマンスが維持出来ていなければ、とりあえず休んで寝るべき」などとさまざまな議論が交わされています。
では、体調が優れないまま在宅勤務を続けることに法的な問題はないのでしょうか。また、上司が業務命令として休むよう指示することはできるのでしょうか。労働問題にくわしい田村優介弁護士に聞いた。
●労務提供の水準が維持できるなら原則問題なし
──体調不良にもかかわらず在宅勤務を続けることは法的に問題ないのでしょうか。
従業員は、労働契約上の義務として、一定の水準で業務を遂行する義務を負っています。
そのため、体調不良が原因で、契約上求められる水準のパフォーマンスが発揮できない場合、在宅勤務によって不十分な労務提供を続けるのは問題といえます。
ただし、新型コロナウイルスのような感染症の場合、周囲への感染を防ぐために在宅勤務を選択するケースがあります。
このとき、体調的には、求められる水準の業務が可能であり、会社の在宅勤務規定に適合していれば、在宅勤務を続けること自体は問題ないと考えます。
●業務命令として「休養」を指示できる場合も
──会社側が在宅勤務を禁止したり、上司が休養を命じることはできるのでしょうか。
会社には、従業員の安全と健康に配慮する「安全配慮義務」があります。そのため従業員の体調を把握する必要があり、この義務を果たすために、合理的な範囲で、従業員から情報提供を求める権限があると考えられます。
その情報を踏まえたうえで、十分な労務提供ができないと判断した場合や、従業員の健康にリスクがあると判断した場合には、業務命令として、あるいは安全配慮義務の履行として、休養を指示することができると考えられます。