朝の始業時間前に、無償で会社の掃除をさせられています。時間外手当を請求できるのでしょうかーー。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者によれば、上司からの指示で、他の社員と共に朝の就業時間前に、会社の掃除をさせられているそうです。この掃除は、相談者がボランティアとして「自主的に行っている」ことになっているため、時間外手当が出ないことに、相談者は頭を悩ませています。
相談者としては、職場の上司に「ボランティアとしてやってくれ」と言われているのですが、断ることは非常に難しいと考えているようです。このような上司の指示は問題ないのでしょうか。西山良紀弁護士に聞きました。
●事実上強制する「ボランティア」は違法…賃金が請求できる可能性も
——上司の指示は法的に問題ないのでしょうか
まず、事実上強制であるにも関わらず「ボランティアとしてやってくれ」と言ったのであれば、上司の指示は違法です。
次に、掃除時間分の賃金を請求できるかどうかは「朝の会社の掃除時間」を労働時間と評価できるかどうかがポイントになります。
——そもそも「労働時間」とはどのような時間といえるのでしょうか
労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。
たとえ、会社が「これはボランティアなので就業時間外に作業してほしい」と指示したとしても、その作業を義務付けていたり、余儀なくしたりしているのであれば、会社の指揮命令下にあるといえます。その場合には、作業時間は労働時間になります。
●今回のケースでは「労働時間に該当する可能性が高い」
——今回の相談事例では、どのように考えられますか
本件では、上司からの指示で会社の掃除をさせられているということです。
「朝の会社の掃除時間」は会社の指揮命令下に置かれた時間であり、労働時間に該当する可能性が高いと思います。
「朝の会社の掃除時間」が労働時間に該当する場合には、掃除時間分の賃金を会社に請求することができます。
ただし、掃除の指示を断っている社員がいる、掃除の指示を断っても注意されたりペナルティを受けたりすることがない、といった事情があれば、労働時間に該当しないと評価される可能性もあります。
最後に、社員は掃除をするために会社に労働力を提供しています。社員からの労働力の提供を無償(ボランティア)と考えることは、会社として問題があると思います。会社は所定の業務時間内で掃除も済ませるように社員を管理していくべきです。