お金は払うので、「大人の関係」を——。
婚約者のスマートフォンに残っていたのは、"パパ活"をうかがわせる相手とのメッセージだった。裏切られたと嘆く男性から、弁護士ドットコムに相談が寄せられている。
相談者は交際から数カ月後にプロポーズし、入籍日を決定。婚姻届を準備し、双方の両親へのあいさつも済ませ、同棲生活を送っていたという。
しかし、その後、婚約者がプロポーズ前に他の男性と会っていた形跡に加え、婚約後も関係を続けようとするやり取りが見つかった。さらに別の男性とも連絡を取り合っていたという。
相談者は慰謝料を請求したいと考えている。結婚前の「浮気」でも慰謝料は請求できるのだろうか。男女問題にくわしい林本悠希弁護士に聞いた。
●婚約前と婚約後で「結論」が変わる
──婚約者が、他の異性と親密な関係にあった場合、慰謝料を請求できますか。
まず前提として、今回のケースでは法的な意味での「婚約」が成立していた可能性が高いと考えられます。
婚約は、当事者が将来結婚する意思を真摯に合意すれば成立します。
ただし、裁判実務では、当事者の意思だけでなく、婚約指輪が交わされているか、挙式の準備がなされているか、プロポーズがされているか、双方の両親へのあいさつが済んでいるかなど、客観的な事情も踏まえて婚約の成立が判断されます。
今回のケースでは、入籍日の合意、両親へのあいさつ、婚姻届の準備、同棲といった事情がそろっており、婚約の成立が認められる可能性は高いでしょう。
そのうえで重要なのは、問題となる行為が婚約前か婚約後かで結論が変わる点です。
プロポーズ前など、婚約が成立していない時期の行為については、交際関係だけでは法的な貞操義務までは認められないとする考え方が有力です。そのため、この行為だけを理由に相手へ慰謝料を請求するのは難しいと考えられます。
一方、婚約成立後の行為については、不法行為として慰謝料請求の対象になる可能性があります。
証拠がメッセージだけで、肉体関係そのものを直接立証できなかったとしても、金銭のやり取りを前提とした誘いや、密会をうかがわせる内容が残っていれば、関係の継続が推認されたり、婚約に基づく信頼関係を著しく損なう行為として責任が認められたりする可能性があります。
●婚約破棄しても「適法」と考えられる
──婚約を破棄することはできますか。
できます。
婚約を一方的に破棄すると、通常は損害賠償の問題が生じます。しかし、相手に不貞や重大な裏切りなど、相談者から見て「正当な理由」がある場合、その破棄は適法と考えられます。
婚約後も他の男性との関係を続けようとするやり取りがあった事情は、結婚をためらうに足る正当な理由にあたると考えられます。
その場合、相談者は慰謝料に加えて、結婚準備にかかった費用についても賠償を求められる可能性があります。
慰謝料を請求する際には、婚約の成立を裏づける資料──たとえば両親へのあいさつの記録、婚姻届を準備した事実、入籍日を決めたやり取りなど──を記録とあわせて時系列で整理しておくとよいでしょう。