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離婚の財産分与、ローンが家の価値を上回る「オーバーローン」だとどうなる?
画像はイメージです(mapo / PIXTA)

離婚の財産分与、ローンが家の価値を上回る「オーバーローン」だとどうなる?

「父がローンを支払い、家を出ていく、母が父にお金を支払い離婚後も家に住み続ける」。父母が離婚する際、こうした財産分与の進め方が問題ないのか——弁護士ドットコムにこんな相談が寄せられました。

相談者によれば、父母が住む家には1200万円のローンが残っている状況だそうです。家の価値は、土地と家を合わせて固定資産税評価額で570万円。一方、父の退職金1700万円以外にはめぼしい資産はない状況のようです。

父の退職金で住宅ローンを完済し、その後家の名義を母に変更したうえで、母から父に金銭を支払う形で財産分与をしたいとのことです。母には資産がないため、父に支払うお金は、相談者ら子どもからの借金で賄う予定だそうです。

こうしたケースで、母は父に対し、財産分与としていくら支払えばよいのでしょうか。

●財産分与とは

財産分与とは、婚姻中に夫婦で築いた財産を公平に分け合うしくみです。

合意があれば自由に決められますが、基本的には、婚姻中に築かれた財産を半分ずつに分けることになります。

では、今回のケースでは半分づつというのはどうやって計算すればいいのでしょうか。

まず、父母の土地建物の固定資産税評価額が570万円で、住宅ローンの残りが1200万円なので、資産価値よりもローンの方が多くみえます。こうした状態を「オーバーローン」といいます。

ただ、固定資産税評価額は一般に時価より低く設定されており、たとえば土地については時価のおよそ7割が目安とされています。 建物は仕組みがやや異なりますが、ここでは一例として、おおよその目安として、570万円 ÷ 0.7 ≒ 814万円で試算してみます。

この金額でも、ローン残高の1200万円を大きく下回りますから、この家はオーバーローンの可能性が高いといえます。

●オーバーローンの家がある場合の財産分与

家がオーバーローンの場合、家の価値からローンを引くとマイナスになってしまいます。

そこで、家だけを切り出して考えるのではなく、退職金などほかの財産も合わせた全体からローンを差し引いて、残った金額を分けるという計算方法があります(計算方法は他にもありますが後述します)。本件のケースでこの方法を使って試算してみましょう。

【ステップ1】プラスの財産を合計する

家の推定時価 814万円 + 退職金 1700万円 = 2514万円

【ステップ2】ローンを差し引く

2514万円 − ローン残高 1200万円 = 1314万円

これが「夫婦で分け合う財産の総額」です。

【ステップ3】2分の1ずつ分ける

1314万円 ÷ 2 = 657万円(父・母それぞれの取り分)

【ステップ4】母から父へいくら支払うか

本件では父がローン1200万円を退職金から完済し、家を母に渡す予定です。

父の手元に残る退職金:1700万円 − 1200万円 = 500万円
父の本来の取り分は657万円なので、不足額は 157万円

したがって、母が父に157万円を支払えば、双方657万円ずつの均等な分与になります。

●実際の計算はもっと細かいのに注意

なお、この計算はあくまで簡略化したものです。

まず、退職金は全額が分与の対象になるわけではなく、婚姻期間に対応した部分だけが対象になるのが原則です。たとえば勤続30年・婚姻20年なら、対象額は「1700万円 × 20年 ÷ 30年 ≒ 1133万円」に縮小するため、計算結果も変わってきます。

また、オーバーローンの家を計算に含めず、退職金だけを分ける、などの別の計算方法もあり、裁判例でも扱いが分かれているようです。

どの計算方法を使うかで結果は変わりますし、どの計算方法を使うかも事案により変わりうるため、弁護士に相談して確認することをお勧めします。

●銀行との関係も忘れずに

もうひとつ見落とされがちな落とし穴があります。住宅ローンを借りている銀行との関係です。

ローンが残っている間は家に抵当権(銀行が優先的に回収できる権利)が設定されています。ローン完済前に勝手に名義変更すると、ローン契約に違反するおそれがあります。

本件は「ローン完済後に名義変更する」プランなので、この点は問題になりにくい形です。ただし、完済するまでの間に父の支払いが何らかの理由で滞った場合、銀行が抵当権を実行して家が競売にかけられるリスクはゼロではありません。

夫婦間の合意と銀行との契約は別の話です。必要に応じて銀行にも事前に相談しておきましょう。

家の時価をより正確に知りたい場合は、不動産業者の無料査定などを利用することも考えられます。大きなお金の問題ですので、弁護士に相談することも検討すると良いでしょう。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

(参考文献)
- 秋武憲一=岡健太郎編著『離婚調停・離婚訴訟 四訂版』(青林書院,2023)
- 松本哲泓『事例解説 離婚と財産分与』(青林書院,2024)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

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