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「疲れているのに求められる…」ワンオペ妻の悲鳴、それでも“夜の営み”は義務?
写真はイメージです(kouta / PIXTA)

「疲れているのに求められる…」ワンオペ妻の悲鳴、それでも“夜の営み”は義務?

仕事も家計も対等なのに、なぜ家庭内の役割や夜の営みだけが私に重くのしかかるのか──。

心身ともに疲れ切った女性から、弁護士ドットコムに相談が寄せられています。

相談者は、夫とほぼ同等の収入を得ているフルタイムの正社員です。家計支出のほとんどを負担する一方、家事や育児のほとんどを一人でこなす「ワンオペ状態」だといいます。

「仕事、家事、育児でヘトヘトで、(夜の営みに)応じるのが嫌になりました」と明かします。疲労に加え、年齢に伴う体調の変化や身体的な苦痛もあり、夜の営みに応じることが難しくなっていたそうです。

一方で、セックスレスが「離婚事由」とされてしまうのではないかと不安を抱いています。

夫との性交渉に応じる義務はどこまであるのでしょうか。夫婦問題にくわしい稲生貴子弁護士に聞きました。

●夫婦の間でも「同意」は必要

──仕事や家事、育児の疲労や身体的苦痛などを訴える妻は、夫との性交渉に応じる義務があるのでしょうか。

配偶者には、互いに協力して夫婦生活を営む義務(民法752条)があります。しかし、これは無条件に性交渉に応じる義務を意味しません。

夫婦間であっても、配偶者の同意が必要であり、同意のない性交を強要すれば、不同意性交として、法的に認められていないのです(刑法177条)。

相談者のように、仕事・家事・育児による疲労や身体的苦痛が大きく、どうしても応じられない状況であれば、無理に応じなくても問題はありません。

●「セックスレスは「離婚事由」になるのか?

──セックスレスが離婚の離婚事由になることはあるのでしょうか。

セックスレスであるという事実だけで、直ちに離婚事由(婚姻関係を継続し難い重大な事由)に該当するとはいえません。

セックスレスに至った経緯、夫婦間で改善を図ろうとしたかどうかなど、さまざまな事情を踏まえて判断されます。

最高裁は婚姻の本質について、「両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として共同生活を営むことにある」としています。(最高裁昭和62年9月2日判決)

このことからすれば、夫婦の一方または双方がその意思を確定的に喪失し、夫婦共同生活の実体を欠き、その回復の見込みがない状態に至った場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると評価されます。

●どんな場合に「婚姻関係の破綻」とされるのか

──「婚姻関係が破綻している」と判断されるのはどのようなケースでしょうか。

たとえば、夫が性交不能であることを婚姻前に告知しておらず、結婚から1年以上にわたり一度も性交渉がなかったケースで、夫婦の性生活は婚姻の重要な要素であり、性交の拒否について離婚原因を認定する一要素となり得るとし、離婚事由として認めた裁判例があります(最高裁昭和37年2月6日判決)。

ただし、性交渉を数回断っただけの場合や、体調不良や病気、年齢などの事情で性交渉ができない場合には、夫婦の精神的・肉体的結合が失われたとまではいえず、離婚事由が認められない傾向にあります。

今回の相談者のように、ワンオペ育児や仕事・家事による疲労・身体的苦痛などを理由に性交渉に応じられない場合には、夫婦の精神的・肉体的結合が失われたとまでは評価されにくく、セックスレスを理由とする離婚事由は認められる可能性は低いと考えられます。

したがって、相談者に「有責性」が認められる可能性は高くありません。

なお、夫婦関係において性行為に対する認識のずれが関係悪化につながることも多く、関係が修復困難となる前に、お互いの状況や考え方を素直に話し合うことが重要ですね。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

稲生 貴子
稲生 貴子(いのう たかこ)弁護士 弁護士法人A&P 瀧井総合法律事務所
「弁護士×オカン×あなたのパートナー」。2児の母としての経験を活かし、家庭や子育て、人生の悩みに丁寧に寄り添う、相談しやすく温かな弁護士を目指しています。

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