妻の不貞相手に慰謝料を求めようとしたところ、相手からED(勃起不全)の診断書とともに「自分は性行為ができない」と反論された──。
このような相談が弁護士ドットコムに寄せられている。
相談者は、探偵に依頼して調査をおこない、妻と男性がラブホテルを利用する証拠を押さえることに成功したという。
その後、慰謝料を求めようと決意したところ、相手の男性から診断書を示して反論されたそうだ。
ラブホテル利用の証拠があっても「EDだから不貞は成立しない」との主張は裁判で認められるのだろうか。男女問題にくわしい松本洋明弁護士に聞いた。
●不貞相手が反論「俺はED」→認められる可能性は低い
不貞行為を理由とした慰謝料請求において、相手方が「EDの診断書」を提出し、「性行為が不可能であったから不貞は成立しない」と主張するケースは、実務上、決して珍しいものではありません。
しかし結論からいえば、仮に相手方が実際にEDだったとしても、今回のようなケースでは、それだけで不貞行為に基づく慰謝料請求が否定される可能性は極めて低いと考えられます。
●「性交類似行為」も不貞行為に含まれる
「EDだから不貞は成立しない」との主張が裁判で認められるかについては、まず「不貞行為」とは何を指すのかを整理する必要があります。
一般には不貞行為というと「肉体関係(性交渉)」をイメージする方が多いでしょう。しかし、法的な解釈としては、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」とされています。
ここでいう「性的関係」には、直接の性交渉だけでなく、裸で抱き合ったり、愛撫をおこなったりするなど、性交渉に準ずる「性交類似行為」も含まれます。
●ラブホテルに入った証拠が“強力”
今回のように「配偶者が第三者とラブホテルを利用した」という証拠がある場合、裁判では、「室内で性交渉があった」あるいは「少なくともそれに類する親密な性的行為があった」と強く推認されます。
社会通念上、ラブホテルは「性的な行為を目的とした場所」と認識されており、ラブホテルを利用したという事実が性的関係の存在を強くうかがわせる事情と評価されるためです。
たとえ、相手がEDの診断書を提出して性的不能を訴えたとしても、ラブホテルという密室で長時間過ごしたという外形的事実に変わりません。挿入の有無にかかわらず、性的行為があったと推認させる可能性は高く、不貞行為に基づく慰謝料請求が認められる可能性も非常に高いといえるでしょう。
相手方からは、さまざまな弁解がされることがありますが、性的行為以外の目的でラブホテルに入る必然性や合理的な理由が認められない限り、不貞行為が否定される可能性は低いと考えられます。
●同性同士の不貞行為認めた判例も「挿入の可否だけが基準ではない」
さらに、ラブホテル利用の事実に加えて、LINEやSNSのやりとりなどで肉体関係を強く示唆する内容や、親密な感情を伝え合う記録があれば、「関係はなかった」との反論を退ける決定打となることも少なくありません。
なお、不貞行為の相手方は「異性」に限られず、同性であっても不貞行為と評価される場合があります。配偶者が同性・異性を問わず、配偶者以外の人と性交類似行為をおこなった場合には、不貞行為に基づく慰謝料請求が認められます。
実際に、同性同士の親密な関係を不貞行為と認めた裁判例もあり、「挿入の可否」だけが判断基準ではないことが明確になっています。