職場の経営者と不倫関係になった女性が、相手の妻にバレてしまったとして、弁護士ドットコムに相談を寄せています。
女性によると、経営者の妻は「相当怒っている」とのこと。女性は妻から、経営者との「接触禁止」を求められそうだといいます。
しかし、女性としては、経営者から夫婦仲がうまくいっていないと聞いており、仕事上、完全に接触しないことは難しく、退職するつもりもないようです。
また、経営者夫妻には小さな子どもがいることから、妻は、女性が子どもと接触・交流していたのではないかと疑っています。それによって、女性は、慰謝料が増額されるのではないかと不安を感じているようです。
このようなケースで、女性は同じ職場にとどまり続けることができるのでしょうか。光安理絵弁護士に聞きました。
●妻は「退職」を強制できないけど…
——女性は、経営者と接触しないことは難しいと考えています。「接触禁止」の要求はどれほどの法的効力があるのでしょうか。
女性が退職に合意していない限り、妻側が一方的に退職を強制することはできません。つまり、女性は職場にとどまること自体は可能です。
ただし、同じ職場で働く以上、完全に接触しないことは現実的に難しい面があります。
このような場合、合意を取り交わす際には
・業務上必要のない接触をしない
・私的な面会、電話、メール、LINE、SNS、その他の連絡をしない
などと「業務上の接触」と「私的な接触」とを区別して取り決めるのが一般的です。
なお、こうした「接触禁止」の取り決めは、双方が合意して取り決めると法的拘束力を持ち、違反した場合に慰謝料の対象となり得ます。ただ、合意を強制されることはありませんので、守れない約束であれば、合意しないことが望ましいです。
●子どもと遊んだら「慰謝料」は増額される?
——女性は妻から高額な慰謝料を請求されるのではないかと心配しています。さらに子どもとの接触を疑われ、増額される可能性もあるとのことです。これらは妥当なのでしょうか。
婚姻期間が10年未満で、不貞関係が2年未満程度の場合、裁判例からすると、500万円の慰謝料は高額です。一般的には100万円から200万円程度が相場で、話し合いによる解決でも多くて300万円前後でしょう。
「子どもとの接触」の内容が、たとえば、「子どもを交えて、1、2度遊びに行った」という程度であれば、慰謝料の増額事由にはなりにくいです。
一方で「毎回、子どもと一緒に遊んでいた」「子どもの前で男女の仲を思わせる言動をとっていた」などの事情があると、増額もありうるでしょう。
●慰謝料は経営者にも負担してもらえる?
——高額な慰謝料を支払うことになった場合、その半額を経営者に負担してもらうことはできるのでしょうか。
不貞行為は、民法上の「共同不法行為」にあたります。この場合、女性は妻に支払った慰謝料額の一部、今回のケースでいえば半額について、経営者に求償することができます。つまり、半額を負担してもらうことができます。
ただし、女性が経営者と相談せずに、相場よりも高額な慰謝料を独断で支払ったような場合には、その半額すべてを経営者に負担を求められない可能性があります。
本来、経営者にも、どの程度の慰謝料を支払うかについて、意見を言ったり、反対したりする機会が与えられるべきだからです。