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病気の妻に「30代で介護は嫌だ」と離婚を告げた夫 身勝手な言い分は認められるのか
画像はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

病気の妻に「30代で介護は嫌だ」と離婚を告げた夫 身勝手な言い分は認められるのか

自分の病気が発覚した後、夫から離婚を切り出され、家からも出て行ってしまった──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

専業主婦だという女性(30代)は、腰の病気にかかり、外出するのも容易でない状態になりました。支えてくれると思っていた夫はしかし、生活費を減らしたり、通院費を別途渡してくれなくなり、女性自身の貯金で補うなど厳しい“仕打ち”が続きました。

料理や掃除、洗濯など痛くても我慢できる範囲の家事はしていたものの、夫は結局「この年で介護は嫌だ」と離婚を要求。新居も契約済みだとして、女性を残して家を出ました。電話も着信拒否されており、話し合いがしたくてもできない状況です。

女性は、離婚したくないと考えているようですが、配偶者の病気を理由にした離婚請求は認められてしまうのでしょうか。また女性としては今後どのように対応すればいいのでしょうか。伊藤真樹子弁護士に聞きました。

●「腰の病気で介護は嫌」は離婚事由に当たらない

──法律が定める離婚事由にはどのようなものがありますか。

相手が協議で離婚に応じる場合は、離婚をしたい理由に関わらず離婚することができます。

しかし、相手が離婚に応じない場合は、法律で定められた「離婚事由」が必要です。民法770条では、離婚が認められる事由として以下のものが定められています。

(1)配偶者に不貞な行為があったとき
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

(1)~(5)いずれかの事由の存在が裁判で認められた場合は、相手の合意がなくても離婚が成立します。

──今回のケースのように「配偶者の病気」は離婚事由になるのでしょうか。

基本的には、病気が離婚事由になることはありません。

ただ、前述のとおり、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」は離婚事由となります(ただし、民法等の一部を改正する法律が成立し、この条項は削除されることとなっていますので、改正法が施行されて以降は離婚事由になりません)。

今回のケースでは腰の病気とのことですので、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」にはあたらず、離婚事由にはなりません。

──離婚したくないという女性としては、今後どのような対応を検討すべきでしょうか。

まずは、家庭裁判所に、「夫婦関係調整調停」を申し立てて夫と協議をすることをお勧めします。これは、裁判所で調停委員が仲介をして、夫婦関係を継続するための話合いを行い、合意を目指す手続きです。

今回のケースでは「話し合いがしたくてもできない状態」とのことですが、第三者である調停委員を介して協議をすることで、双方ともそれまでとは違った視点で話ができる可能性があります。

ただ、調停はあくまで話し合いであり、裁判所が何か決めたり命じてくれる制度ではないため、あくまで話が平行線のまま終わってしまうこともあります。

調停がうまくいかず別居状態が継続することも想定し、婚姻費用の請求も合わせて行うべきでしょう。婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用で、別居中もその負担を求めることができます。

今回のケースでは、相手からの離婚の要求は認められず、別居中も婚姻費用を請求することができますが、注意していただきたいのは、別居期間が長期にわたった場合は、それが離婚事由となる可能性があることです。

期間については、当事者の年齢や子どもの有無、結婚期間などによって異なりますが、一定期間が経過したときには離婚が認められてしまうことも視野に入れて、今後の生活設計を考えたほうが良いと言えます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

伊藤 真樹子
伊藤 真樹子(いとう まきこ)弁護士 仙川総合法律事務所
2008年に弁護士登録後、離婚や相続などの家事事件、債権回収などの民事事件を500件以上取り扱う。「何かあったらすぐに相談に行ける、身近な法律事務所」をモットーに法律事務所を運営。

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