「もう隠し事はない」。そう約束した夫に、隠し子がいた──。
こんな女性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
女性によれば、半年前、夫が借金を抱え、自己破産の手続き中であることがわかりました。
結婚前には知らされていなかった事実にショックをうけ、離婚も考えたそうですが、「ほかに隠し事はないか」と何度も確かめ、やり直すことにしたといいます。
ところが最近になって、夫が結婚前に認知した子どもがいることが判明。子の母親が自宅に押しかけ、大きな騒ぎになったのがきっかけでした。
次から次に出てくる夫の新事実に、相談者は「どうしても許せない」と離婚を考えています。
夫が拒んだ場合でも、離婚は認められるのでしょうか。離婚・男女問題にくわしい林本悠希弁護士の監修で解説します。
●隠し子も自己破産も、それだけでは直ちに法定の離婚事由にならない
──借金や自己破産、さらに隠し子の存在が発覚しました。夫が離婚を拒んでも、裁判で離婚は認められますか。
当然ですが、夫が応じれば、理由を問わず話し合いで離婚できます。
裁判で離婚が認められるのは、民法770条1項が定める離婚事由がある場合に限られます。
代表的なのは不貞行為ですが、今回のケースでは、子どもは結婚前に生まれ、認知も結婚前です。婚姻中の不貞にはあたりません。
借金や自己破産も、それ自体は法定の離婚事由ではありません。
そこで争点となるのが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項4号)があるかどうかです。
●「隠し事はない」という嘘の積み重ねがポイント
──どのような事情が考慮されるのでしょうか。
裁判所は、夫婦関係が修復できないほど壊れているかを総合的に判断します。
夫は借金の発覚時に「もう隠し事はない」と繰り返しながら、認知した子の存在を隠していました。妻に対する不誠実な対応の積み重ねは、信頼関係を壊した事情として大いに考慮されるでしょう。
丁度当てはまる裁判例が確認できなかったので、私見にはなりますが、一般的な夫婦関係において、「隠し事をしない」という約束をしたのに実は隠し子がいたという事実が発覚することは、非常にショッキングで、「婚姻を継続し難い重大な事由」を支える大きな事情のひとつと評価されるものと思います。
場合によっては、慰謝料請求が認められる余地すらあると思います。
ただし、たとえば、隠し子の存在が発覚した後も平穏に夫婦関係を続けた期間がそれなりにあるとするなら、その事由が夫婦関係に与えた影響は少ないとみられる可能性もあると思います。
したがって、もちろん経済事情にもよりますが、隠し子の発覚により離婚を決意されたなら、むやみに時間をおくことなく、別居や離婚調停の申立をするなど、離婚の意思を客観的にもわかるように明らかにしておくことが重要になります。