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「危なっ!」歩道を疾走するランナー集団、法的に問題ないの? 狭い道で接触の危険も
画像はイメージです(nobik6092 / PIXTA)

「危なっ!」歩道を疾走するランナー集団、法的に問題ないの? 狭い道で接触の危険も

歩道を集団で走るグループランは法的に問題ないのでしょうか。──。弁護士ドットコムにそんな相談が寄せられました。

相談者の女性によると、ある日の仕事帰り、グループランを楽しむランナーの集団に遭遇したといいます。「話しながら走ってくる上、道を譲る気もなければ、ペースを緩めることもありません。人がすれ違うと接触しそうな狭い歩道だったので非常に怖かったです」。

過去、相談者は同様に走るランナー集団とすれ違った際に接触したこともあるといいます。「相手からは謝罪もありませんでした。その時とても痛かったので、以後は極力ランナーからは遠ざかるように注意しています」と取材に話していました。

もちろんマナーを守って走るグループがほとんどだと思いますが、中には、歩行者にとって脅威を感じるようなグループランもあるようです。そもそも集団で歩道を走ることに法的な問題はないのでしょうか。

●走っていても、法律上は「歩行者」にあたる

まず、集団で歩道を走る行為そのものが法的に問題あるかという点についてです。

結論からいえば、歩道を数人の集団で走る行為自体は、原則として法律上問題ありません。

道路交通法では、ランナーも「歩行者」と扱われます。そして、歩道は歩行者が通行するために設けられた道ですから、歩行者であるランナーが歩道を通行するのに、特に法律上の問題は生じません。

●事故が起きたら損害賠償の責任や「暴行罪」などの犯罪成立の可能性も

歩道走行そのものに問題がなくても、歩行者と接触事故を起こし、ケガをさせたり持ち物を壊してしまったりした場合は、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求の対象となります。集団で走行していた場合、過失の程度に応じてランナー全員が賠償責任を負う可能性もあります。

また、刑事上も、ランナーが「ぶつかるかもしれない」という認識(故意)を持ってぶつかれば暴行罪(刑法第208条)、それで相手に負傷結果が生じれば傷害罪(刑法第204条)に問われる可能性もあります。

なお、ぶつかる認識がなかった場合でも、ケガをさせてしまえば過失傷害罪(刑法209条)にあたる可能性があります。

●狭い歩道でランナーと歩行者に優先順位はあるか

「後ろから煽られた」など、狭い歩道でのランナーと歩行者の関係に悩む声もありますが、道路交通法は、主に歩行者と車両との関係における危険を防止することを趣旨として規定されており、歩行者同士の優先関係は特に定められていません。

自転車などの車両と異なり、ランナー(歩行者)に対し、他の歩行者への「徐行」や「一時停止」といった罰則付きの義務は課されていません。

●車道や自転車専用帯を走っても良いのか

集団ランナーに対し「歩行者の邪魔になるときは車道を走るべき」という声もあります。

原則として、歩道と車道の区別がある道路では、歩行者であるランナーは歩道を通行しなければなりません(道路交通法第10条第2項)。

ただし、同条第2号は、道路工事等で歩道を通行できないときや、「その他やむを得ないとき」は例外的に車道を通行できると定めています。

この「その他やむを得ないとき」には、集団ランナーが他の歩行者の安全を確保し、通行の妨げにならないように配慮する目的で、一時的に歩道上の混雑を避けて車道に出る行為が含まれるかどうかはかなり微妙です。

たしかに、歩道を歩いている人を優先させることが、歩行者優先という大原則を守るための行動と評価することもできそうです。

しかし、上の条文は通行が困難な場合を想定したものであり、自分が速く走るのに邪魔だから道路に出る、というのは、あくまで自分の都合にすぎず、「やむを得ない」とは評価できないともいえそうです。

この点は意見が分かれるかもしれませんが、集団ランナーが他の歩行者の迷惑回避や安全確保のため、一時的に車道に出るということは、「やむを得ない」とは評価できないのではないかと考えます。

仮にこれを「やむを得ない」と解するとしても、継続的に車道をランニングするのではなく、一時的な移動であること、そして車道の右側端を通行する(同法第10条第1項)など、自らの安全確保と通行区分の原則を遵守する必要があります。

●施設によっては独自の制限を設けていることも

新宿御苑:
庭園内のランニングについては、「10名以上の団体走行はできません」という人数制限があります。また、桜のシーズンなどの混雑期には、安全確保のためランニング自体が禁止される場合があります。これは法律や条例ではなく、施設の利用ルールや管理規則に基づく制限です。

皇居外苑:
マラソンやウォーキングの利用に関して、大規模な競技会やイベントを対象に、人数の上限設定や「公園利用者、一般通行人等の利用及び通行の妨げになるような走行をしないこと」などの禁止事項が定められています。これらのルールも法律や条例ではなく、一般の歩行者の安全のため、施設の管理者が利用者に守るよう求めているものです。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

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