子どもが学校で友だちにケガをさせてしまった。相手側に誠意をもって対応しようとしたところ、治療費以外の「意外な費用」を求められた──。そんな戸惑いの声が、弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者の子どもは、学校行事のレクリエーション中にふざけて、同級生にケガを負わせたといいます。
同級生の保護者に謝罪したところ、保険でカバーできる治療費に加えて「習い事の月謝」や「参加予定だったイベントのキャンセル料」などの負担を求められたそうです。
この要求に応じる必要はあるのでしょうか。民事事件にくわしい林朋寛弁護士に聞きました。
●責任能力の目安は「12歳」程度とされる
──学校で子どもが別の子どもをケガさせた場合、責任は誰にあるのでしょうか。
原則として、不法行為による損害賠償責任を負うのは加害者本人です(民法709条)。
ただし、加害者が未成年の場合、責任能力がなければ賠償責任を負いません(民法712条)。責任能力が認められるかどうかの一応の目安としては、小学校卒業年齢である12歳とされます。
未成年者に責任能力が認められない場合には、親(親権者など)など法的に監督義務のある人が賠償責任を負うことになります(民法714条)。
監督義務のある人が責任を免れるためには、監督義務を怠っていなかったこと、または義務を尽くしていても損害が生じていたはずだったことを証明する必要がありますが、実務上は容易ではありません。
●学校で生じたケガ→「親に責任ない」とならない
──学校で起きた事故でも、親が責任を負うのでしょうか。
学校内での事故であっても、直ちに「親に責任はない」とはなりません。
加害生徒が中学生以上で責任能力が認められる場合、まず本人が709条に基づく責任を負います。そのうえで、親の監督義務違反が認められる場合には、親が直接709条に基づく責任を問われる可能性もあります。
子どもが学校にいる間であっても、親の監督責任が完全に消えるわけではないと考えられています。
●学校側の責任も問題になる
──学校側は責任を問われないのでしょうか。
学校側も、状況によっては賠償責任を負います。
国公立の学校であれば、国家賠償法に基づき設置者である国や地方公共団体の責任が問われ、私立学校の場合は使用者責任(民法715条)や安全配慮義務違反などが問題になります。
加害生徒や親の責任と、学校側の責任は併存する可能性があります。そのため、被害者としては、加害者側、学校側、あるいは双方に請求することができます。ただし、損害賠償の二重取りはできません。
●財産の損害と心の損害を請求できる
──どのような賠償が認められますか。
損害賠償には大きく分けて、「財産の損害」と「精神的苦痛の損害(慰謝料)」があります。
もし事故が起きなかったら持っていたはずの被害者の財産の状態と、事故のせいで減ってしまった被害者の財産の状態の差額が、賠償の対象となる基本的な財産的損害になります。医療費や通院交通費などが典型例です。
これに加えて、精神的苦痛に対する慰謝料も認められます。
●塾や習い事の月謝は含まれる?
──ケガのために通えなくなった「塾や習い事」の月謝や「イベント」のキャンセル料なども支払う必要はあるのでしょうか。
習い事やイベントの振替ができず、払戻しもされないような場合には、事案によっては損害に含まれると考えられます。
実際、交通事故の損害賠償事案では、無駄になった教育費や旅行のキャンセル料が損害として認められた例もあります。
ただし、必ずしも請求額の100%を支払わなければならないわけではなく、事案によっては被害者側にも落ち度(過失)があったといえる場合があります。学校側との責任分担も検討されますし、加入している個人賠償責任保険などでカバーできる場合もあります。
●月謝負担に応じる必要がある可能性
今回のケースでは、月謝やキャンセル料の損害に含まれる可能性は否定できません。
ただし、請求額が妥当かどうか、過失割合、学校側との責任分担など、具体的な事情によって結論は変わります。
被害者側と交渉して話がまとまれば、その内容を示談書にまとめて、支払い内容などを明確にしておくべきです。
請求を受けている保護者としては、早い段階で自分に合った弁護士に相談し、助言を受けながら交渉や示談書作成を進めることが望ましいでしょう。