喫茶店やカフェで勉強する人は少なくありません。では、それが毎日、長時間にわたる場合は──。
弁護士ドットコムには、喫茶店を頻繁に利用しているという人から、店での過ごし方に関する相談が寄せられました。
相談者は通っている喫茶店で、毎日朝と夜の2回、長いときは5〜6時間勉強しているといいます。常連客として、店に迷惑をかけないよう、カウンター席を利用し、混雑してきたら席を立つなどの配慮をしているとのことです。
そうした気遣いをしているため、店の回転率に影響はないと考えていますが、「長時間の滞在が法的に問題となるのかも」「もし店側から退去を命じられたら、応じる義務があるのか」と疑問を抱いているそうです。
喫茶店などでの長時間滞在は、法的にどのように位置づけられるのでしょうか。また、店から「退去してほしい」と言われた場合、どう対応すべきなのでしょうか。西塚直之弁護士に聞きました。
●「営業妨害の可能性は低い」
──毎日2回、5〜6時間滞在するのは、店への業務妨害となる可能性はありますか。
私自身も司法試験の受験生だったころ、家では集中できないときに喫茶店で勉強していました。気が弱いのでコーヒー1杯で何時間も粘ることはできませんでしたが、1〜2時間は店で過ごしていた記憶があります。
さて、「毎日2回、5〜6時間滞在する」という行為が、刑法上の業務妨害罪に問われる可能性は、現実的に低いと思います。
また、民法上でも、席の利用に関する契約上の義務に反する「債務不履行」と評価されるケースもほとんどないでしょう。喫茶店などでは、商品を注文すれば一定時間、店内の設備が利用できることを前提としているからです。
ただし、店が明確に利用時間を定めている場合は別です。その場合、客はそのルールを承知のうえで利用することになるため、定められた時間を超えて居座ると契約違反にあたります。したがって、店から退去を求められることになります。
●店側から退去求められたのに無視したら?
──もし店から退去を求められても応じなかった場合、法的な責任は生じますか。
利用時間が定められていて、すでに時間を大幅に超過しているため、店側が繰り返し退店を求めているにもかかわらず、あえて無視して居座り続けると、不退去罪(刑法130条)に問われる可能性があります。
また、居座った結果、店の営業に支障を与え、損害を生じさせた場合には、民事上の損害賠償責任を負うことがありえます。ただし、そこまで発展するケースは稀なのではないでしょうか。
一方で、店が特に利用時間を設けていない場合には、長時間の滞在があったとしても、店側の「お願いベース」での注意にすぎません。その場合、退去を求められても法的義務は生じにくいでしょう。
●「客も店も、気持ちのよい関係を」
──長時間利用したい客と、回転率を上げたい店側。どのようなコミュニケーションやルール作りが求められるのでしょうか。
互いが気持ちよく利用・提供できる関係が望ましいと思います。
店側は長時間の利用を避けたいのであれば、事前に明確なルール(利用時間や追加注文など)を示すことが重要です。一方、利用する側も、店の厚意に甘えすぎず、混雑時には席を譲るなど、周囲への配慮を忘れない姿勢が求められます。