夫が大学生と不倫している──。新婚まもない女性から弁護士ドットコムに相談が寄せられています。
相談者によると、大学生は当初、夫が既婚者だと知らずに交際を始めました。しかし、既婚と知った後も、お泊りで「ディズニーデート」などを続けているといいます。
ただし、「既婚と知った後の不貞行為」を裏付ける証拠はありません。
女性は「関係を絶ってくれるなら慰謝料は請求しない」と考えていますが、大学生に送った内容証明は「受取拒否」で返送され、連絡は途絶えたままです。そこで女性は、大学生の両親に手紙と誓約書を送り、サインを促してほしいと考えています。
このように相手の両親に働きかける行為は、法的に問題ないのでしょうか。光安理絵弁護士に聞きました。
●「受取拒否」されたらどうする?
──大学生に送った内容証明は「受取拒否」で返ってきたそうです。今後どのように接触すればよいのでしょうか。
内容証明郵便は、名宛人や同居者の受取印が必要で、郵便局員が手渡しします。そのため、相手が身構えて受け取りを拒むこともあります。
一方、普通郵便であればポストに投函されるため、相手はつい中身を確認するケースもあります。差出人が分かると開封されずに捨てられるかもしれませんが、茶封筒にして差出人を記載しなければ、開封を促せることもあります。
また、相手の電話番号やメールアドレスがわかっていれば、電話やメールで連絡を取ることもできます。ただし、繰り返し連絡するのはやめておきましょう。
●「証拠」がないと交際解消を強制できない
──相手がSNSに「ディズニーデート」を投稿しているそうですが、不貞行為の直接証拠はないとのことです。この場合でも関係解消を求めることは可能でしょうか。
食事やデートだけでは違法行為とまではいえません。ただし、妻がつらい思いをしていることは事実なので「不快なので、会うのをやめてほしい」と伝えること自体は可能です。
相談のケースでは、大学生は夫が既婚と知らずに交際を始め、知った後もデートを続けているとのことです。お泊りデートもあるそうなので、肉体関係がある可能性は高いものの、証拠がない以上、法的に交際解消を強制することはできません。
●両親に手紙を送るのはリスクがある
──大学生本人と連絡が取れない場合、両親に手紙を送って交際解消を求めるのは問題ないのでしょうか。
お気持ちはよくわかりますが、避けたほうがよいでしょう。
未成年であれば、親が話し合いを担うこともありますが、今回のケースでは大学生です。また、子と親とは法的に別人格です。親に法的責任はありません。肉体関係の証拠もない状況で、両親に働きかけると、逆に慰謝料を請求されるリスクもあります。
また、夫が、大学生に対し、既婚であることを隠して交際を始めた経緯を大学生の両親に知られると、今度は夫が大学生側から慰謝料を請求されかねません。
なお、名誉毀損は社会的評価を下げることをいいますので、今回のような妻が大学生の家族に連絡を取るような場合は、むしろプライバシー侵害にあたる可能性が高いといえるでしょう。