「ねえ、パパ、これって恐竜の骨じゃない!?」。夏休みに子どもと一緒に出かけた先で、足元に不思議な石が転がっていた。よく見ると、何やら不思議な模様が──。
そんな出来事は滅多にないかもしれませんが、毎年のように「小学生が化石を発見!」といったニュースが報じられています。全国各地では、化石を発掘できる体験イベントも盛んに開かれています。
弁護士ドットコムにも「化石が出てきた場合」に関する相談が寄せられています。
では、もし本当に化石を見つけたら、それを拾って持ち帰っていいのでしょうか。そもそも化石は「発見した人のもの」になるのでしょうか。星野学弁護士に聞きました。
●原則として「土地の所有者」のものになる
──他人の土地で発見した化石は誰のものになるのでしょうか?
原則として、その土地の所有者のものになると考えます。
一般的に、古生物の化石は「無主物」だとされています。無主物の場合、民法のルールによって、所有の意思をもって占有することで、その「所有権」を取得します(239条前段・無主物先占)。
しかし、無主物であっても、化石のようなものについて、無主物先占による所有権取得を認めることは不当だという考えがあります(『新版注釈民法(7)物権(2)』P390・有斐閣)。
化石の多くは土の中にあり、土地の一部だと捉えれば、その土地の所有者のものになります。
一方で、石器のように別個・独立したものと捉えれば、埋蔵物と同じ(民法241条但書き)ような扱いになり、発見者と土地の所有者の共有とすべきという考えもありえます。
●勝手に持ち帰ってはダメ!
──では、化石を拾って持ち帰ってはダメなのでしょうか?
たとえば、他人の土地に無断で立ち入って、化石を見つけて持ち帰る場合は、建造物侵入罪に問われる可能性があります。
窃盗罪が成立するかどうかは微妙なところですが、先に述べたように、化石の所有権を土地の所有者が取得すると考えるのであれば、第三者が化石を持ち去った場合、土地の所有者に対する窃盗罪が成立する可能性はあります。
なお、土地を掘削したり、形状を変えたりすれば、民事上は、土地の所有者から原状回復(化石の返還)や損害賠償が請求される可能性があります。
さらに、文化財保護法の対象となっている土地で発見した場合、許可なく採取したり、掘削していれば、刑事罰が科される可能性もあります。
●無断採掘にはリスクがある
──では、他人の土地でなかったり、重要文化財に指定された土地でなければ、化石を持ち帰っても問題ないのでしょうか。
この点についても注意が必要です。たとえば山林での採取であれば、森林法により規制を受け、無断で持ち帰れば罰則の対象となる場合があります。
また、河川敷での採掘も、河川法により管理者の許可が必要です。許可なく土地を掘削したり、形状を変えたりすれば、やはり罰則を受ける可能性があります。
つまり、私有地でなくても、無断採掘にはリスクがあるということです。
また、重機を用いて大規模に採掘し、地形を変えて、地崩れや洪水などの災害リスクを高めた場合は、刑事責任を問われる可能性が高まります。
化石を採取する際は、その土地が(1)私有地かどうか(2)文化財保護法の対象かどうか、(3)森林法や河川法の適用があるか──といった点に必ず注意を払いましょう。
いずれにしても、節度を守って行動することが大切です。化石はロマンがありますが、法律の観点も忘れずに楽しみたいものです。