「別れた元カレに、無断で写真をさらされました」。そんな深刻な相談が弁護士ドットコムに複数寄せられています。
ある女性は、配信アプリで就活用の証明写真やネット上の名前をさらされ、容姿について中傷を受けているといいます。
さらに撮影に同意した覚えのない性的な動画も元カレが持っており、他の人に見せることをほのめかしたそうです。女性は精神的ショックを受けています。
また、別の女性は、交際中に盗撮されたと思われる入浴中や睡眠中の写真が、元カレのSNSにアップされたと証言します。削除を求めても削除されていないといいます。
女性たちは元カレと連絡が取れなくなっており、とても心配しています。こうした被害に遭ったとき、どう対応すればよいのでしょうか。松本典子弁護士に聞きました。
●勝手に元交際相手の写真をさらしたら
——元交際相手が、同意なく女性の写真をネット上でさらす行為には、どのような法的問題がありますか。
法的には、その女性の私生活の平穏(プライバシー権)が侵害されることになります。また、肖像権の侵害にもあたり、いずれも不法行為です。さらし方によっては、名誉毀損になる場合もあります。
そして、ネットの特性として、削除されなければこれらの写真は半永久的に残ります。SNSを通じて拡散されたり、不特定多数者にダウンロードされるなど、権利侵害が続くことになります。後述するように、プラットフォーム側に削除請求をするなどの対応を検討する必要があるでしょう。
●性的動画を勝手に投稿したらリベンジポルノ防止法違反に
——女性が撮影や公開に同意していない性的動画を所持し、他人にみせた場合、元交際相手は何らかの罪に問われる可能性がありますか。
たとえ見せた相手が特定少数者であっても、拡散目的だった場合、リベンジポルノ防止法の「公表目的提供罪」に問われる可能性があります(1年以下の懲役または30万円以下の罰金)。
また、ネット上にばらまく形で公表した場合、ベンジポルノ防止法の「公表罪」に問われる可能性があります(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)。
場合によっては名誉毀損罪に問われる可能性もあります(3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)。
民事上でも、不法行為(名誉毀損やプライバシー権侵害など)として損害賠償請求の対象になる可能性があります。
●もしも元カレと連絡が取れなかったら?
——被害に遭った女性たちは元交際相手と連絡が取れず、困っているケースが少なくありません。写真や動画が公開された状態が続いているような場合、被害者はどのような方法で対応すればよいのでしょうか。
元交際相手と連絡が取れない場合でも、(1)プラットフォームに削除請求して、問題画像を削除してもらう、(2)プラットフォームに発信者情報開示請求をして、写真や動画を投稿した人を特定したうえで、その人に対して損害賠償請求する──などの方法で対応することが考えられます。
削除請求の方法としては、まずはプラットフォーム上の専用フォームから通報することが考えられます。反応がない場合には、裁判所に対して削除の仮処分を申し立てる方法があります。
リベンジポルノ防止法では、プロバイダ責任制限法の特例を定めて、通常の事例の削除請求の場合よりも迅速に対応できるようになっています。
元交際相手について一定の情報が明らかになっている場合には、弁護士に依頼することにより、弁護士会照会手続きなどによって、元交際相手の所在が特定できることもあります。
なお、このような方法をとるうえでは、被害に気付いたらすぐにスクリーンショットなどで、被害の状況を証拠としておくことが肝要です。その際は、投稿者の情報、日時、URL、投稿内容などがわかるようにすると良いと思います。