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和牛「霜降り肉」買ったのに、半分は「赤身肉」だった! 〝肉の部位偽装〟は刑事罰のリスクも
スーパーで肉を買う女性:node / PIXTA(イメージです)

和牛「霜降り肉」買ったのに、半分は「赤身肉」だった! 〝肉の部位偽装〟は刑事罰のリスクも

スーパーで「牛肉パック」を購入したところ、「和牛霜降ローススライス国産」とラベルに書かれてあったのに、霜降り肉の下に隠れるように「赤身肉」が入っていた——。

買い物客から弁護士ドットコムに法律相談が寄せられた。

この相談者によれば、まるで「底上げ」のように入れられた赤身肉と霜降肉の割合は「半々ぐらい」だったという。購入先のスーパーでは以前も「肉の下に脂身ばかりが隠されていた」といった似たようなことが数回あったそうだ。

商品の一部に商品名と異なる部位が入っていた場合、法的な問題があるのだろうか。田中敦弁護士に聞いた。

●景品表示法上の優良誤認表示の問題がある

——スーパーなどの店で「霜降り肉」と表示されているのに、実際には霜降り肉ではなく、赤身肉や脂身ばかりが入っていた場合、どのような法的な問題が考えられるでしょうか。

商品の一部に商品名と異なる部位が入っていた場合、これを販売する事業者が法令違反の責任を問われるおそれがあります。

具体的には、景品表示法上の優良誤認表示の問題です。

「霜降り肉」の表示を見た消費者は、霜降り(赤身と脂肪がバランスよく交雑している)であると信じて購入します。しかし、実際には、霜降りとはいえない部分(脂肪交雑のない赤身等)が大部分を占めていた場合、「実際よりも著しく優良であると示す表示」 に該当し、優良誤認表示として景品表示法に違反するおそれがあります(景品表示法第5条第1号)。

●過去には「霜降りサーロインステーキ」に牛脂注入していた飲食店に措置命令も

また、「霜降り肉」の表示を見た消費者は、天然の霜降りであると信じる可能性が高いため、実際には牛脂を注入した加工肉であった場合にも、優良誤認表示の問題を生じ得ます。

優良誤認表示は、消費者庁による行政指導や措置命令の対象となります。措置命令が発せられると、違反事業者の名称や違反行為の概要が公表されるため、企業は深刻な信用の失墜につながります。

さらに、優良誤認表示により得た3年間の売上の3%に相当する金額の課徴金納付を命じられる可能性もあり、優良誤認表示をした商品の売上が大きければ、課徴金も高額となります。

過去には、「霜降サーロインステーキ」と表示しながら、実際には牛脂を注入する加工をした肉を提供していた飲食店を運営する事業者に対し、優良誤認表示を理由とする措置命令が発せられた事例があります。

画像タイトル 和牛霜降り肉: SORA / PIXTA(イメージです)

●不正競争防止法上の誤認惹起行為の問題も

——ほかにどのような問題が考えられますか。

不正競争防止法2条1項20号は、商品やサービスの品質や内容等について誤認させるような表示をすることが不正競争(誤認惹起行為)にあたると定めており、「霜降り肉」と表示しながら、実際には異なる商品を販売することは、誤認惹起行為に該当し得ます。

悪質な誤認惹起行為をした事業者は、刑事罰の対象となるおそれがあり、過去には、鶏や豚の肉を混ぜたミンチ肉を「牛肉100%」と表示して販売した事業者の代表者につき実刑判決が下された例があります。

また、競業他社から、誤認惹起行為の差止めを求められたり、誤認惹起行為による売上減少につき損害賠償を請求されたりするおそれもあります。

●まとめ「信用失墜、刑事処分、損害賠償のリスクがある」

牛肉の部位の偽装は、産地偽装とは異なり、視覚により容易に見つけられることが多いため、不正はすぐに発覚し、販売者の法的責任につながる可能性があります。

販売者としては、業界団体のガイドライン等の定義に従って正確な表示をすることを心がけるとともに、値札や広告の表示が実際の商品内容と合致しているかチェック体制を構築することも重要です。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

田中 敦
田中 敦(たなか あつし)弁護士 田中敦法律事務所
田中敦法律事務所代表弁護士。京都大学法科大学院2008年卒業、 2009年弁護士登録、大阪弁護士会所属。2020年ニューヨーク州弁護士資格取得。知的財産に強み(著作権・商標権等)。個人、スモールビジネス、中小企業まで、知的財産トラブルに対応する。フラダンスの振り付けが著作権として認められた裁判で勝訴。

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