米や野菜の価格高騰が話題になっていますが、追い打ちをかけるように都心の賃貸マンションでは「家賃値上げ」が広がっています。庶民の家計は「火の車」と言っても過言ではありません。
春といえば、契約更新のタイミングです。「税金が上がっている」などの理由で、大家から「月1万」の値上げを求められたという話もちらほらと聞きました。
同じような家賃値上げは、弁護士ドットコムにも相談が寄せられています。このような家賃アップに応じないといけないのでしょうか。賃料の増額請求にくわしい高島秀行弁護士に聞きました。
●家賃アップに応じなくても「契約更新」となる
――大家さんから家賃アップを求められた場合、これに応じないと「契約更新」できないのでしょうか?
定期借家契約ではなく、普通借家契約で部屋を借りている人だとして検討します。
法律上、貸主(大家)が普通借家契約の更新拒絶をする場合、「正当な理由」が必要とされています。
借主が家賃アップに応じないことは、この「正当な理由」にあたりませんので、貸主は更新拒絶できず、法定更新によって自動的に契約は継続されることになります。
したがって、任意に家賃アップに応じなくても、すぐに出ていく必要はありません。
家賃アップに応じたくない場合は、貸主が訴訟を起こしてくるなどして、訴訟等で決着するまでは、借主は自分が相当だと思う賃料(通常はこれまでの賃料)を支払って住み続けることができます。
貸主としても、調停や訴訟をやるには、弁護士費用や鑑定費用などがかかるので、そこまでやらずにあきらめるケースも多いです。
しかし、貸主が賃料アップを求める調停を申し立て、それでも解決せず、訴訟を起こした場合、裁判所が選任した不動産鑑定士による賃料の鑑定をおこなって、判決で賃料額が決まれば、その金額が賃料となります。
ただし、賃料の額は、鑑定によるので、貸主が求めた金額まで値上げされるとは限りません。
もし値上げとなった場合、これまで支払ってきた賃料との差額に年1割の遅延損害金をつけて支払うこととなります。
●家賃を支払わないと「契約解除」の理由となってしまう
――もし大家さんが前のままの家賃を受け取ってくれない場合、どのように対応すべきでしょうか?
先ほど説明した通り、法定更新によって契約継続されることになりますが、賃料を受け取ってくれないからと言って、支払わない対応をとってしまうとまずいです。これは契約解除の理由となるからです。
貸主が賃料を受け取らない場合、借主としては、貸主の受領拒絶を理由として、自分が相当と考える賃料(通常はそれまでの賃料)を法務局に供託をする必要があります。