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クオカード付き宿泊プラン、出張で泊まったら横領になる? 「累計で20万円もらった」という猛者も
写真はイメージ(ふじよ / PIXTA)

クオカード付き宿泊プラン、出張で泊まったら横領になる? 「累計で20万円もらった」という猛者も

出張先の宿泊費でクオカード(QUOカード)をもらうと横領になりますか?

そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

出張者向けのホテルの中には、「クオカード付き」プランをもうけた施設があります。このプランで宿泊すると、コンビニなどで使えるQUOカードを特典としてもらえることになっています。

例えば、「QUOカード3000円付」という1万円のプランがあったとします。その場合、会社には「宿泊費」として1万円を請求しながら、個人で使える3000円のQUOカードを手に入れられることになります。

冒頭の相談者は、この手法により、もらったQUOカードの累計は20万円にのぼるといいます。

裏技とも言える方法ですが、出張の多い会社員にとってはお馴染みのようで、SNS上にも様々な書き込みがありました。

「出張のホテルでQUOカード付きのとこばっか泊まってる」

「料金の8割がQUOカードで占められてるカプセルホテルとかやり過ぎでしょwww」

このような仕組みを導入しているホテルに問題はないのでしょうか。また、会社の許可を得ずにこうした宿泊プランを利用してQUOカードを自分のものにすることは罪にならないのでしょうか。

山田長正弁護士に聞きました。

画像タイトル ホテル検索サイトにはクオカード付きの宿泊プランが多く出てくる

●売り出し方によっては景品表示法違反の恐れ

ーークオカード付きプランを提供しているホテルに問題はないのか?

景品表示法によれば、「懸賞」によらずに提供される景品類は、本体価格の20%以下と定められています。

つまり、たとえば宿泊代金が10000円の時に特典として付与が可能なクオカード額は2000円までということになります。

もっとも宿泊とクオカードのセット販売であれば問題ありません。

しかし、実質的に見て、上記の景品表示法を免れていると評価できれば違法となりえます。

いずれにしましても、たとえば、宿泊代金費用として一括表示することにより、業務上横領罪の共犯的立場になる可能性がある点に留意する必要があります。

画像タイトル 写真はイメージ(Pressmaster / PIXTA)

●実費精算では犯罪や懲戒の可能性も

ーー会社に黙ってクオカード付きプランを利用して、クオカードを自分のものにすることは問題ないのか?

問題が生じることがあり得ます。そもそも出張業務の一環として会社から宿泊費が支払われるものですが、後日会社に経費として申請する場合、一時的に出張をした従業員が立替払いをしたことになります。

よって、宿泊費は実際には会社のお金により支払われています。

ところで、経費精算には主に(1)概算請求、(2)実費請求の2種類があります。

まずは清算方法について定めた社内規則を事前に確認し、(1)か(2)のどちらかによって、クオカードを取得することが問題になるかどうか判断することになります。

画像タイトル 写真はイメージ(HiroS_photo / PIXTA)

(1)の概算請求とは、例えば「宿泊費は一律○○円を支給する」と決まっている場合です。あらかじめ定められた決まった額を支給するものなので、特に問題は発生しません。

他方、(2)の実費請求とは、宿泊費にかかった実費を会社が全額負担する場合です。この場合、クオカードは、会社のお金により取得されたものですので、会社の所有物となり得るため、会社に帰属する財産に当たることが一般的です。

つまり、今回が(2)の実費請求の場合、従業員は会社の財産であるクオカードを自由に処分等できない可能性があります。

そのため、勝手に処分等すれば問題が生じる可能性があります。この場合、会社からの懲戒処分の対象となり、民事上の損害賠償に加えて、業務上横領罪や詐欺罪という刑事罰を受ける可能性も否定できません。

もし社内規則に記載がない場合は、事前に会社に対して、宿泊プランを申し込む際はクオカード付きプランで申し込みしても問題ないかなど、どのように処理をすべきかの確認が必要です。

他方、会社側も社内規則の整備を行い、クオカードの取扱いについて検討を行うのがよいでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

山田 長正
山田 長正(やまだ ながまさ)弁護士 山田総合法律事務所
山田総合法律事務所 パートナー弁護士 企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。

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