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ハムスター「飼っていい」と言われたのに…更新時に「敷金1カ月上乗せ」は拒否できる?
写真はイメージです(かんてん / PIXTA)

ハムスター「飼っていい」と言われたのに…更新時に「敷金1カ月上乗せ」は拒否できる?

「ハムスターを飼っていたら敷金が増額されました」

大家の了承を得て、賃貸物件でハムスターを飼っていたところ、契約更新のタイミングで突然、敷金1カ月分の上乗せを求められた──。

弁護士ドットコムに、こんな相談が寄せられました。

相談者によると、入居時、大家からは「ハムスターなら申請も追加費用も不要」と説明され、仲介業者にも事前に報告し了承を得ていたといいます。

ところが更新時になって、大家の“代理人”を名乗る家族が「申請がなかった」と主張し、条件変更を求めてきました。一方、大家本人は「家族が勝手にやったこと」と話しているそうです。

相談者は支払わなければならないのでしょうか。坂野真一弁護士に聞きました。

●ハムスターでも飼育許可必要?

──そもそも、犬猫ではなく、ハムスターのような小動物であっても、大家の飼育許可は必要なのでしょうか。

賃貸物件の利用条件は、原則として賃貸借契約の内容により定まります。まずは契約書にどのような規定があるのかを確認することが重要です。

仮に、締結した賃貸借契約に「動物の飼育を一律に禁止する条項」が定められている場合、賃借人はその内容に同意して契約を締結したことになりますから、原則として動物の飼育は契約違反となります。

ただし、今回のケースでは、仮に契約書にそのような飼育禁止条項があったとしても、賃貸人である大家との間でハムスター飼育について禁止条項を適用しないという口頭の合意があったといえますから、常識的なハムスター飼育であれば、契約違反にならないと考えられます。

なお、契約書に動物飼育禁止の特約がない場合であっても、動物を飼育するのであれば、大家に事前に了承を(できれば書面で)得ておくことが望ましいでしょう。書面があれば、そのような特約があったことを証明しやすくなるので、後日の紛争予防につながります。

●ハムスター飼育OKの「特約」は有効か

──大家本人がペットの飼育を了承し、仲介業者にも事前に報告・了承を得ていた場合でも、契約更新時に「申請がなかった」ことを理由に敷金を上乗せすることは認められるのでしょうか。

まず前提として、今回のケースの賃貸借契約の具体的内容がはっきりしません。ただし、大家(賃貸人)と相談者(賃借人)との間で、ハムスター飼育について口頭で許可が与えられていた点は重要です。

契約は、口頭であっても成立しますから、この口頭での飼育許可は、賃貸借契約の特約として合意されたものと評価できると考えられます。

また、その際に飼育を許可する代償については何ら合意されていませんから、無償でのハムスター飼育を許可する「特約」があったと評価すべきでしょう。

なお、仲介業者は通常、契約当事者ではありません。仲介業者がこの件に関して大家の代理人でないのであれば、仲介業者に事前に申請して仲介業者の了承を得ても意味はなく、大家の了承があって初めて、ハムスター飼育許可の特約は有効となります。

問題は、契約更新時に改めて申請しなければ、この特約が失効するのかという点です。

多くの賃貸借契約では、「賃貸借期間満了の◯カ月前までに賃貸人または賃借人から賃貸借を終了させる旨の申し出がないときは、期間満了の日の翌日からさらに◯カ年同一の条件で賃貸借契約は更新されるものとする」との規定があります。

このような条項に基づいて契約が更新される場合、原則として「同一の条件」が維持されることになりますから、ハムスター飼育を無償で許可する特約もそのまま残るものと思われます。

したがって、相談者のほうから更新時に改めて申請をしなくても、大家側の一方的な敷金上乗せ要求に応じる必要はないと考えられます。

ただし、更新時に契約条件を再協議する旨の契約条項や合意がある場合には、新たに条件について双方で合意する必要があります。大家が敷金上乗せを求めてきた場合は協議して決めることになるでしょう。

●「大家の代理」を名乗る家族の請求は有効か

──更新時の請求をしてきたのが、「大家の代理」を名乗る家族で、大家本人は「勝手にやったこと」と説明している場合、この請求は有効でしょうか。

賃貸借契約は、賃貸人と賃借人との間の契約です。賃貸人の正当な代理人でもない者が、契約変更を申し入れてきても、賃借人に応じる義務はありません。

相手が代理人を名乗るのであれば、賃借人としては、大家本人に確認する、大家からの委任状があるのか確認する、などの対応を取るべきです。

今回のように、大家本人が「家族が勝手にやった」と述べているのであれば、その家族の行為は無権代理(民法113条)にあたり、大家が追認しない限り効力は生じません。

つまり、このケースでは、家族からの敷金増額請求は、法的には有効とはいえない可能性が高いでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

坂野 真一
坂野 真一(さかの しんいち)弁護士 ウィン綜合法律事務所
ウィン綜合法律事務所パートナー弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」(いずれも中央経済社)、「増補改訂版 先生大変です!!:お医者さんの法律問題処方箋」(耕文社)、「弁護士13人が伝えたいこと~32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。

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