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築50年弱のボロアパート、建て替えを阻む“最後の住人”に大家イライラ 「損害賠償請求できないのか?」
画像はイメージです(Ushico / PIXTA)

築50年弱のボロアパート、建て替えを阻む“最後の住人”に大家イライラ 「損害賠償請求できないのか?」

新しいアパートの建築遅れに伴う収益の損失分を損害賠償請求したい──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の大家は、アパートが築50年弱で老朽化も進んできたため、取り壊して新しいアパートを建築したいと考えています。しかし、アパートにまだ住んでいる最後の1人が「のらりくらり」として出ていってくれないようです。

その住人に家賃滞納などの問題はなく、相談者が立退料として50万円を提示しましたが、退去してもらえませんでした。住人に出てもらわないと新築できませんが、立ち退いてもらうために裁判をするとなると時間がかかることにも頭を悩ませています。

相談者としては、新しいアパートの建築が遅れたことに伴う収益の損失分を、立ち退かない住人に損害賠償請求できないかと考えているようですが、可能なのでしょうか。関戸淳平弁護士に聞きました。

●契約が続いている以上、立ち退きを求めるのは容易でない

——アパートの住人は家賃滞納などをしていませんが、大家から出ていくよう言われたら従わないといけないのでしょうか。

賃貸借契約が続いている以上、賃借人(アパートを借りている住人)には物件に住む権利がありますので一方的に立ち退きを求めることはできません。立ち退きを求めるには賃貸借契約を終了させる必要があります。

本件では家賃滞納等の問題はなく、契約を一方的に解除することはできませんので、(1)合意解約する方法、(2)契約期間満了をもって契約を終了させる方法のいずれかによるしかありません。

(2)については期間満了の1年前から6カ月前までに更新拒絶の通知(期間の定めのない場合には6カ月前までに解約申入れ)をしておく必要があります。

加えて、契約を終了させるだけの「正当事由」が求められます。アパートの老朽化は「正当事由」になり得ますが、賃借人が居住しているケースでは別途立退料の支払いが求められることがほとんどです。

──建て替えたい大家としてはどのように動くべきでしょうか。

まずは話し合いでの解決を目指すことになりますが、大家としては、賃借人の対応を見ながら、解決に要するコスト(立退料や手続費用等)と期間のバランスも考えて、賃借人に提示する条件や訴訟へ移行するタイミングを検討していくことになります。

——新しいアパートから得られるはずだった収益の損失分を立ち退かない住人に損害賠償請求することは可能なのでしょうか。

賃借人は賃貸借契約によって適法に居住しているわけですから、交渉が難航してアパートの建て替えが遅れたからといってその損害賠償を賃借人に求めることはできません。

契約終了後も賃借人が違法に居座っているような場合には損害賠償を求める余地はありますが、逸失利益については因果関係や損害額の立証が難しい場合もあります。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

関戸 淳平
関戸 淳平(せきど じゅんぺい)弁護士 横浜ユーリス法律事務所
中央大学法学部卒。2004年弁護士登録(横浜弁護士会)。2009年より横浜ユーリス法律事務所パートナー。不動産売買、賃貸、マンション問題、相隣問題等、不動産に関連する事件を数多く手がけている。

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