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隣人ガチャに失敗し、地獄の毎日…「ため息がうるさい」「出ていけ」と嫌がらせ 対処法はあるのか?
写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

隣人ガチャに失敗し、地獄の毎日…「ため息がうるさい」「出ていけ」と嫌がらせ 対処法はあるのか?

弁護士ドットコムには、マンションの隣人トラブルに関する相談がよく寄せられています。その中でも多いのが「騒音トラブル」です。しかし、「ため息がうるさい」というクレームをつけられてしまった男性がいます。

男性によると、隣人は高齢の女性で、管理会社を経由してクレームの手紙が届いたそうです。手紙には、「深夜から早朝にかけてのいびきがうるさい」「女性の声がうるさい」といったことや、「ため息がうるさい」とまで書かれていました。

男性はこの手紙を受け取ってからマウステープを使用したり、枕を変えたり、病院に通院するなどさまざまな「いびき対策」をとったそうです。なお、男性は女性を部屋に入れたことはないといいます。

その後、男性は、管理会社を通じて謝罪や対策をしていることなどを隣人に伝えましたが、納得してもらえず、かえって嫌がらせをされて困っているとのことです。

話の通じない隣人との騒音トラブル、どうしたら解決できるのでしょうか。吉田要介弁護士に聞きました。

●いびきやため息は「受忍限度」を超えない

——マンションでトラブルの原因となる騒音ですが、一般的にどの程度までが、我慢すべきとされる範囲(受忍限度)を超えると判断されるのでしょうか。

環境省の環境基準は、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準として、専ら住居の用に供される地域及び主として住居の用に供される地域において、昼間55デシベル以下、夜間45デシベル以下をあげています。

また、横浜市の生活騒音防止に関する配慮すべき指針では、家庭用機器・音響機器騒音防止の目安となる指針値として、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域において、昼間(午前8時から午後6時まで)50デシベル、朝(午前6時から午前8時まで)、夕(午後6時から午後11時まで)45デシベル、夜間(午後11時から午前6時まで)40デシベルが定められています。

これらの数値は一定の参考になると思われます。

もっとも、この数値を少しでも超えたら、受忍限度を超えるというものではなく、他の事情を総合考慮することになります。通常、音の種類にもよりますが、数値を超えている時間の長短、その頻度、程度を考慮することになろうかと思われます。

特に、いびきやため息は、自然と出てしまうものでもあるので、数値の超過の程度が大きく、かつ、超過する時間が長期間、高頻度でなければ、受忍限度を超えるものではないと思われます。

判例には、環境条例における深夜の規制基準は50デシベルであるが、建物の防音効果を考慮すると、建物内においてはより厳格な数値が求められている点を考慮して、最大41デシベルの年に数回程度の歌声について、受忍限度を超えるとしたものがありますが、歌は、生活音とは明らかに異質な音であり、自然に出る音ではない(防ごうと思えば容易に防げる)ことが影響しているものと思われます。

●隣人に退去を求めたり、損害賠償請求できる?

——男性は隣人から、深夜に壁を叩かれたり、玄関のポストを開けられて「いびきがうるさいんだよ!」「出ていけ!」などの暴言を吐かれているそうです。男性は隣人に損害賠償請求や退去を請求できますか。

注意を促すために、壁を少し叩く程度のものだったり、いびきがうるさい旨を伝える程度のものを越えているのであれば、かかる行為により精神的苦痛を受けたとして、慰謝料等の損害賠償請求をすることはできると思われます。しかし、退去を請求できるのは貸主のみですので、貸主でない以上、退去の請求はできないと思われます。

——男性はできるだけ円満に解決したいとのことですが、現実的にはどのような対応が望ましいのでしょうか。

管理会社を通じて謝罪や対策をしていることなどを隣人に伝えても、納得してもらえず、かえって嫌がらせをされているのであれば、どちらかが退去しない限り、円満な解決は難しいと思われます。

根本的な解決は、どちらかが退去するしかないのですが、それが難しければ、現状できる範囲の対策をしつつ、相手の度を超した行為等については、毅然と、刑事、民事双方の法的手段をとらざるを得ないと思われます。もっとも、民事上損害賠償で認められる慰謝料は低額であるのが現状です。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

吉田 要介
吉田 要介(よしだ ようすけ)弁護士 ときわ綜合法律事務所
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。

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