「もう関係をキッパリたちたい」。
職場不倫の関係解消をきっかけに、相手の女性から追い詰められている——。
こんな既婚男性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられている。
男性は、かつて同じ職場にいた女性と不倫関係になったという。既婚であることは相手も承知していたが、関係を持ってから、「早く離婚しろ」と迫られるようになったという。
それを断ると、周囲や勤務先に「バラす」と言われ、家族について殺害をほのめかす言葉まで浴びせられたそうだ。
すでに不倫関係は解消し、相手も同じ職場ではなくなったが、それでも相談者の仕事中に姿を現すなどの行為が続いているそうだ。
さらには「生活の保証をしろ」と金銭まで求められていると嘆く。
男性は、自ら招いた事態であると反省しつつ、なんとかしたいと苦しんでいるという。どのように対応すべきなのか、男女問題にくわしい林本悠希弁護士の監修で解説する。
●「バラす」と告げた時点で脅迫罪
──相手の言動には、刑事上どのような問題があるのでしょうか。
自ら招いた関係とはいえ、矛先が家族にまで向く状況は深刻です。
相手の言動には、複数の犯罪にあたりうるものが含まれます。
「周囲や勤務先に不倫関係をバラす」という言動は、名誉に害を加えると告げるものですから、実際に言いふらしていなくても脅迫罪が成立しえます(刑法222条1項)。
家族の生命に危害を加えるとほのめかす発言も同じです(同条2項)。
また、「離婚しろ」など義務のないことを強要する言動は強要罪にあたる可能性があります(刑法223条1項)。さらに、実際に言いふらせば名誉毀損罪にあたります(刑法230条1項)。
関係が終わったあとも仕事の場に現れて業務を妨げれば、刑法234条の「威力を用いて人の業務を妨害した者」を処罰する威力業務妨害罪が成立する可能性があります。
そして、暴露や危害をほのめかして金銭を求める行為については、まだ金を支払っていない段階であれば恐喝未遂罪が問題となります(刑法249条1項、同法250条)。
加えて、関係解消後に勤務先へ押しかけたり面会を要求したりする行為は、ストーカー規制法の規制対象となります。
●金銭要求に応じる義務はない
──「生活の保証をしろ」という要求には、応じる必要があるのでしょうか。
結論からいえば、関係を解消するにあたって手切れ金や生活費を支払う法的義務はありません。
相手が関係の解消によって不利益を受けたと主張したとしても、相談者の行為との間に法的な因果関係を認めるのは難しいでしょう。
不倫関係の維持や対価を目的とした合意は公序良俗に反して無効とされ、恐喝や脅しを背景とした金銭要求に応じる合意も無効と考えられます。
求められるまま支払えば、追加の要求を招く恐れがあります。
まずはメッセージのやりとりや、押しかけられた日時と場所を記録してください。
そのうえで、いきなり弁護士名で受任通知を送ると逆上させることがありますから、先に警察へ相談して安全を確保しておきましょう。
警察へ相談することで、ストーカー規制法に基づき警察による警告や、公安委員会による禁止命令等の措置を引き出すことができます。